官民協働で新たな支援制度スタート
費用寄付の企業で就業体験グローバル人材育成に期待[留学支援]

国内初の官民協働留学支援の事務局の看板かけには下村博文文科相(左から4人目)ら同省幹部が顔をそろえた=東京都千代田区の文部科学省で4月2日

官民協働で大学生や高校生の留学を支援しようという国内初の制度が今年度から始まった。その名も「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」。留学費用は企業の寄付で賄い、帰国後は寄付した企業でのインターンシップ(就業体験)に参加できる仕組みを文部科学省が中心となって作った。学生、企業の双方にメリットがあり、グローバル人材育成の核として期待されている。

このプログラムは、留学者数の減少傾向に対し、国を挙げて「世界で活躍できる人材育成」に乗り出し、留学機運を高めるのが狙い。文科省によると、日本人の留学者数は2004年の8万2945人をピークに年々減少傾向が続く。11年は5万7501人で、7年間で約3割減った。

一方、対照的なのが中国。中国人の留学者数は02年は約18万人だったのが、11年には約72万人で4倍増とうなぎ上りだ。韓国も14万人で約1・6倍増だ。

日本人の海外留学が減少している背景について、国立大学協会が87大学にアンケートを実施している。それによると、最も多かったのが「帰国後の留年」を心配する声で約68%を占めた。今は単に留学しただけでは就職につながらず、逆に留学で就職活動の準備が遅れるなど「就活」にマイナスになると考える学生が多いとされている。

次に多かったのが「経済的問題」(約48%)だ。多額の費用をかけて留学しても将来マイナスになるというのであれば、学生がお金をかけることはないのも当然だ。長い景気低迷がこの傾向に拍車をかけた。

「トビタテ!留学JAPAN」はこうした要因を解消するための内容になった。経済支援は、▽奨学金▽渡航費▽授業料が対象。奨学金は地区によって異なり、例えば、留学先が米国なら月額16万~20万円、アジア、中南米、アフリカなら12万円。渡航費はアジアは10万円、それ以外は20万円。授業料は上限が30万円。同省の担当者は「かなり手厚い内容」と胸を張る。

これを支えるのが、企業や個人からの寄付だ。目標は総額200億円と壮大だ。下村博文文科相や同省幹部が自ら直接企業を回り、協力を呼びかけている。4月24日現在で、53社から計66億円の寄付が集まっている。数カ月で初年度の目標(50億円)を突破した。短期間でこれほど巨額の寄付が集まったことは企業側もグローバル人材の育成の必要性を認識していることを表している。

就職へのマイナスという課題を解決するために、企業とのつながりを強く意識したプログラムになっている。「事前研修」として留学前に、国内で、寄付した企業による研修を受けられるほか、帰国後もインターンシップに参加できるようにして、就職のチャンスを広げる。

さらに、このプログラムの特徴は「官民協働」という点だ。プログラムの実務を担当する「プロジェクトチーム」は官民混成。事務局は文科省にあるが、メンバーは塾経営者から会社員、大学職員、文科省職員までさまざま。その多くが留学経験者だ。

これまでの留学支援は国、企業、大学がばらばらに対応しており、「都市部の学生が対象になりがちで、意欲を持った学生に広く手が届かなかった」(同省)という。

留学コースは(1)自然科学系(2)新興国(3)世界トップレベル大学(4)多様性人材(5)地域人材(6)高校生――の6種類。(4)はスポーツから芸術、政治、行政、文化まで、さまざまな分野において、世界を視野に「社会に影響を与えたい」という意欲ある学生が対象。いずれも自ら留学計画を立てことが条件だ。期間は1カ月~1年。「実践」重視のため、大学に限らず、海外の企業でのインターンシップも可能という。

7年間で1万人目指す

7年間で計1万人の留学支援を目指すが、初年度の予定枠(300人)には5倍以上の応募があり、上々の滑り出し。第1弾となる300人は書類、面接の審査を経て選ばれる。8月に事前研修を実施し、同月下旬にも海外へ「飛び立つ」予定だ。

昨年6月に閣議決定した「日本再興戦略」は東京五輪・パラリンピック開催年の20年までに日本人留学生を12万人に倍増させる計画だ。さらにグローバル人材の育成対策として、同戦略に盛り込まれたのが「国際バカロレア(IB)」の普及拡大だ。国際バカロレアは海外の主要大学が採用している入学資格の一つ。スイスに本部がある国際バカロレア機構が定めるカリキュラムを高校2年から2年間で修了する。

経済、地理、音楽などといった科目に加え、8000字の課題論文をまとめたり、CASと呼ばれる奉仕活動などを最低150時間受けたりする。最終試験を受け、その点数によって入学資格が得られる制度。授業は課題発見力や問題解決能力、コミュニケーション能力の育成が中心。教師と生徒、生徒同士による双方向・協働型授業が特徴だ。

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