官々愕々 野党再編のカギは「戦争」
〔PHOTO〕gettyimages

日本維新の会が橋下徹、石原慎太郎、各共同代表をリーダーとする二つのグループに分裂することになった。橋下氏は、結いの党、みんなの党、さらには民主党まで巻き込んだ野党再編につなげたいとしている。

政権を担う能力のある野党がないことが安倍政権の高支持率を下支えする状況下で、自民党と対峙できる野党の誕生という期待がかかる。しかし、私は今の再編のやり方では、その実現は難しいのではないかと見ている。

大手新聞各社の社説では、単なる数合わせだけでなく、大きな政策の旗印を掲げた再編を期待するというが、ことはそう簡単ではない。

自民党時代から民主党時代まで、最近の政治の対立軸は、主に経済政策に関するものだった。思い切った構造改革をするのか、それとも既得権グループを温存しながらの漸進的改革とするのか。維新の会、みんなの党、結いの党の基本路線は思い切った改革路線だ。

維新は、改革に抵抗する政治家が多い石原氏が率いる太陽の党と野合して寄り道をしたが、今回、石原グループを切ったことで、ようやく本来の「改革」路線での野党再編が見えてきた。維新、みんな、結いの3党は経済構造改革をめざす点で一致しているから、この3党の合流は自然なように見える。しかし、それだけでは、合流の条件としては不十分だ。

何故なら、安倍政権は経済政策よりも戦争志向の安保政策を重視している。3党が経済政策で一致して合流しても、外交安全保障政策で一枚岩でなければ、矢継ぎ早に繰り出される戦争志向の政策への賛否で踏み絵を踏まされ、新党の統一基盤は簡単に揺らぐことになるだろう。

外交安全保障政策で超タカ派の石原グループが切られた後に残る橋下グループには、実は石原氏ほど極端ではないものの、外交安全保障政策で安倍総理の考えに近いタカ派が非常に多い。みんなの党も最近は右寄りの姿勢を強めている。一方、結いは維新やみんなに比べてはるかにリベラル色が強い。

そこで、焦点となるのが、結いの党の姿勢である。維新との連合を拒否していた渡辺喜美みんなの党前代表が失脚し、みんなと維新の合流の可能性が出てきた。維新の右派は、政策的には結いよりもみんなに近い。維新がみんなになびくのを防ぐために、結いはある程度の右旋回に追い込まれる可能性がある。現に、集団的自衛権や原発問題でその兆候が現れている。

一方最大野党の民主党は、極端な右から左まで、何でもありの理念なき政党だ。前原誠司氏や細野豪志氏らは維新との合流を目指すという。彼らも経済構造改革派だが、外交安全保障では右寄り。特に前原氏は安倍氏に近い。

こうなると、野党再編はかなり右寄りの維新が結いを吸収し、その後に民主党右派と合流という図式になる。安倍政権のさらに右に石原新党もできる。これでは、安倍政権を利するだけで、今の野党の支持率合計十数%の中での小さな再編で終わることになるだろう。そして公明党も、野党の右傾化で最後は与党の地位を守るため妥協せざるを得なくなり、安倍氏の路線はさらに強化される。

今最大の野党は民主でも維新でもない。4割前後に膨らんだ無党派層だ。彼らの多くは「改革」を支持するが、「戦争」は絶対に嫌だという層である。これまで、その層に応える政党がなかった。逆に言えば、「改革はするが戦争はしない」という政党を作れば、4割の無党派層の多くが雪崩を打って支持に回るだろう。

それこそが、目指すべき「野党再編」だと思うのだが。

『週刊現代』2014年6月28日号より

原発の倫理学(税別価格:1400円)
話題作『原発ホワイトアウト』著者・若杉冽氏推薦! 「霞が関には古賀さんを隠れキリシタンのように慕っている官僚たちがいる。原発の裏も表も全部わかる必読書」

原発は「倫理的」に許されないエネルギーだという議論をすると、それは「感情的」あるいは「主観的」な議論であるというレッテル張りをされる傾向があります。経済論や技術論は受け入れられても倫理論は受け入れられないのが現状だと言ってよいでしょう。しかし、倫理の問題は、経済や技術の分野でも非常に重要な問題です。二人の元総理(小泉氏と細川氏)が期せずして脱原発を「人の生き方の問題」「倫理の問題」として語り始めたことは、極めて重要な意味があります。私が小泉氏や細川氏に期待するのは、大きな哲学、「脱原発の倫理観」を国民に提示し、国民的大議論を巻き起こすことです。議論の末、国民の大多数が新しい日本の生き方、「脱原発と再生可能エネルギーで、自然とともに生きる国日本」を目指すという共通の目標に到達すれば、その時初めて、脱原発が可能になるのだと思います。――<「はじめに」より抜粋>

※本書は2013年5月に先行発売した電子書籍『原発の倫理学 古賀茂明の論考』の内容を大幅にアップデートした上で再編集したものです。