成長戦略のカギは地方にあり!匠の技術と国内雇用守る「100年企業」の新旧融合力

日本の製造業は中小下請けが支えているとよく言われるが、その「縁の下の力持ち」を象徴するかのような、こつこつとモノ造り能力を進化させながら100年間永続している中小企業がある。

今年で創業100年目を迎える株式会社「きしろ」(本社・兵庫県明石市)だ。神戸製鋼所はタンカーなどの船舶用大型ディーゼルエンジンの「クランクシャフト」では世界40%のシェアを持つが、その構成部品のほとんどを切削加工して納入しているのが「きしろ」である。

一般消費者には無名の会社だが、会長の松本好雄氏は競馬のGⅠレースで活躍する「メイショウ」の冠を持つ競走馬のオーナーとして有名。「メイショウ」は本社がある「明石」の「明」と「松本」の「松」を組み合わせてのものだ。

熟練技と若返りを両立、切削加工の「きしろ」

「きしろ」の本業は切削加工。なかでも形状が複雑で、かつ巨大なものを精密に低コストで切削加工していくことに強みがある。クランクシャフトの部品では直径数メートル、重さ20トンの部品を削るほか、エンジン周辺のピストンやシリンダーなどの加工も行う。長さ20メートル、重さ160トンの大型プレス機に使われる支柱を削ることもある。

きしろの松本好隆社長(筆者撮影)

社員数は250人で売上高は約30億円。典型的な中小企業の規模だが、自社ブランドの製品があるわけではないのに、「加工賃」だけでこの売上高は相当なものだ。それだけで社員を食わせている、いわば「匠の会社」でもある。

もともとは1915年に「ポンポン船」のエンジンを造る会社として創業された。戦後に加工専門の企業に業態を変えたが、創業以来、削る技術に磨きをかけて100年間それを進化させ続け、生き残ってきた。

松本好隆社長は「加工する工作機械を自前で生産、整備し、削る際に部品を固定する治具も作業がしやすいように自社開発していることが特徴。また、うちが得意とする大型部品はすべて全自動生産とはいかず、熟練技も必要になるため、それに対応する人材育成に力を入れ、安定した品質とコストを実現させていることも強み」と話す。

巨大な部品は自重による歪みや、加工時の熱の発生による寸法変化などが起こることもある。こうしたことへの対応は熟練工のノウハウが不可欠だ。その一方で、工作機械はコンピューター技術との融合など毎年のように新しい技術が採り入れられて進歩する。熟練の技と新しい技術を融合させていくのは結局、人材の力でしかないということである。

すでに5年前から定年を65歳にまで伸ばず一方で、工業高校卒などの新入社員を積極採用している。この結果、地方の中小企業では珍しく若返りが進み、社員の平均年齢は10年前の42歳から現在は38歳にまで下がった。ベテランから若手への技能伝承も強く意識している。

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