雑誌
バーバリーに逃げられた!名門・三陽商会の「苦悩と決断」売り上げの半分を失う……会社は大丈夫なのか

「自社でやるから、御社はもう必要ない」。約半世紀にわたる盟友から突きつけられた三行半。「それでも大丈夫」と強気な経営幹部を見て、社内は余計に騒然。絶体絶命のピンチは、突然やってきた。

「本業喪失」の危機

「バーバリーから契約打ち切りを迫られているのは社員ですらわかっていたのに、経営陣はバーバリー後について本気で対策を打ってこなかった。それでいて交渉の過程は社員に知らせずに、バーバリーに逃げられることが決まったこの期に及んでも、他の事業で補えば3年ほどで業績は回復できると夢のようなことを語っている。もうこの会社に未来はない。私もバーバリーみたいに会社から逃げ出すつもりです」

ある現役社員がこう憤れば、別の中堅社員も次のように語る。

「社員の私が言うのもなんですが、いますぐ大規模なリストラをしないと会社存続の危機になりかねない。それなのに、経営陣は経営責任を取らされると思って、『リストラをするつもりはない』と言っているんです。自分たちはあと数年役員報酬をたっぷりもらって高額の退職金を受け取って、逃げ切るつもりなんでしょう」

真っ白なタイル敷きの床、壁には趣ある巨大絵画が飾られており、シンプルながら瀟洒な雰囲気が漂う。受付は「電話だけ」といういまどきの最先端オフィスとは違い、入り口には2人の受付対応の女性が座る。防衛省から目と鼻の先、東京・新宿区に立つ三陽商会本社ビルを訪ねると、名門企業らしいシックな雰囲気を醸し出していた。

しかし、そんな落ち着いた佇まいからは想像もできないような騒ぎが勃発し、同社内ではいま1943年の会社設立以来、最大級の混乱が巻き起こっている。

事の発端は5月19日、三陽商会が会見を開いて、英バーバリー社と結んでいた高級ブランド『バーバリー・ロンドン』のライセンス契約が2015年6月で終了すると発表したことだ。

同時に派生ブランドである若者向けの『バーバリー・ブルーレーベル』『バーバリー・ブラックレーベル』についてはライセンス契約を継続するが、「ブランド名からバーバリーの名称は外す」という条件での契約更新であることを公表した。

「三陽商会にとって、バーバリー事業は派生2ブランドも含めて売上高の半分を占めるといわれるほどの主力事業ですが、今後はバーバリーの名を冠した事業が行えなくなる。要は『本業喪失』の危機に陥っている。同社の直近の売上高は1000億円ほど。最悪の場合、そのうち500億円が吹き飛ぶ可能性すらあります」(大手アパレル幹部)

そんな経営の根幹を揺るがす非常事態にもかかわらず、三陽商会の経営陣は「ウィンウィンになれる結果を探ってきたので、その点では良い形になった」などと嘯くばかり。そのため社員の不満は爆発、経営陣への疑心暗鬼が溢れている。

「社員が特に怒っているのは、ブラック、ブルーレーベルについて、バーバリーの名前が使えないのにライセンス料を支払う『不平等条約』を結んだこと。バーバリー特有のマイクロチェック柄は使っていいという契約だが、そんなものにライセンス料を払う必要があるのか、というわけです」(アパレル業界の取材をする経済ジャーナリスト)

バーバリー側との交渉の責任者を務めてきたのは、副社長の小山文敬氏である。

三陽商会の会議室内に設けられた電話会議システムを使って英国本土のバーバリー幹部らと話し合いを重ね、時にロンドンに赴いての直接交渉も行ってきた。

今回の契約解消は、日本事業の直営化を進めたいバーバリー側の方針に沿ったもので、小山氏は、「すべてのバーバリー事業を継続できないとなれば経営への衝撃が大きすぎる」として、「日本独自ブランドであるブルー、ブラックレーベルだけは継続させて欲しいという交渉を行ってきた」と三陽商会関係者は言う。

「小山氏ら幹部は、ブラック、ブルーレーベルについてはバーバリーの名前がなくても売れると考えています。彼らの理屈は、三陽商会は東北の工場で多くの商品を作っているため、『メイド・イン・ジャパン』のブランドが効くというもの。そのため、今回の交渉でブラックとブルーの継続を勝ち取れたことを、『良い形になった』などと語っている」(前出・ジャーナリスト)

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら