牧野 洋の「メディア批評」
2014年06月13日(金) 牧野 洋

朝日新聞とNYタイムズの書評欄は似て非なるもの ~スノーデン本の扱いに見る彼我の隔たり

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〔PHOTO〕gettyimages

ニューヨーク・タイムズの『暴露』評

新聞の書評欄は単なる「新刊紹介コーナー」なのか。それとも「ジャーナリズム」なのか。結論から言うと、単純化すれば日本では前者、アメリカでは後者である。

アメリカの「ジャーナリズム」志向を示すうえで格好の実例がある。前回の当コラムでも取り上げた『暴露 スノーデンが私に託したファイル』(原題は「ノー・プレイス・トゥー・ハイド」)について、米ニューヨーク・タイムズが取り上げた書評だ。

アメリカ人ジャーナリストのグレン・グリーンワルド氏が書いた『暴露』は、米国家安全保障局(NSA)による広範なスパイ活動を暴露したベストセラー本。主人公のエドワード・スノーデン氏は米タイム誌「パーソン・オフ・ザ・イヤー(今年の人)」の次点に選ばれ、グリーンワルド氏らが放ったスクープは調査報道の金字塔として今年のピュリツァー賞を受賞しているだけに、注目度抜群だ。

ニューヨーク・タイムズの書評は5月22日付電子版(印刷版は6月8日付)で掲載された。評者は米月刊誌『ヴァニティフェア』のコラムニストを務めるマイケル・キンズレー氏で、「グリーンワルドは常に自分が正しいと思い込んでいる気難しがり屋であるようだ」などと手厳しく書いた。

これがオンライン上で大反響を引き起こした。グリーンワルド氏の人格を攻撃するような表現を含んでいたうえ、一介のジャーナリストの独断で国家最高機密を公にする行為にも疑問を呈したからだ。しかも掲載紙はニューヨーク・タイムズだ。

ニューヨーク・タイムズこそ調査報道で名声を高めた新聞だ。特に「ペンタゴンペーパー(ベトナム戦争に関する国防総省機密文書)をスクープした新聞」として歴史に名を刻んでいる。1970年代前半に内部告発者のダニエル・エルスバーグ氏が決死の覚悟で機密文書を盗み出し、同紙記者に持ち込んだペンタゴンペーパー事件は、スノーデン事件とそっくりなのである。

NSA機密文書のスクープを載せた新聞は英ガーディアンと米ワシントン・ポストの両紙だ。『暴露』の中でグリーンワルド氏はニューヨーク・タイムズについて「権力に近い新聞」と見なし、容赦なく批判している。その腹いせとして、厳しい書評になるのを承知でニューヨーク・タイムズはキンズレー氏を評者に指名したのではないか---こんな指摘が読者から同紙に殺到したようだ。

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