佐藤優さんに質問---日本政府とイタリアとの情報保護協定について締結する方針という報道がありましたが、これをどのように評価しますか?

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol038 質疑応答より

【質問】 (略)宗教団体(例えば創価学会)が政治的見解を出してもよいという佐藤さんの意見には私も賛成ですが、それとは別のレベルの皮膚感覚として、教会が一定の政治的方向性を当たり前のように表明することに強い違和感を覚えます。

早い話、(池田大作氏とは違って)イエス様が特定の政策や政党や政治的な考え方を支持なさるとは、私にはどうしても思えないのです。佐藤さんは、日本の典型的なプロテスタント教会がしばしば左翼的な立場を表明し、政治的に活動することについて、どのような意見をお持ちですか。

――佐藤優さんの回答: (略)日本のプロテスタント教会が政府に対して批判的なのは、左翼イデオロギーに基づくものではなく、明治期に薩長土肥体制の新政府でキャリアを伸ばすことができない旧佐幕派の知識人がキリスト教徒になったからと思います。(以下略)

【質問】 4件目: 安倍晋三首相は5月29日夜、日本人拉致被害者を再調査することで北朝鮮と合意したと発表しました。

北朝鮮は約3週間後に特別調査委員会を立ち上げ、拉致被害者と拉致された疑いのある特定失踪者の調査などを開始し、これを受け、日本政府も北朝鮮に対する独自の制裁措置の解除を始めるとのことですが、北朝鮮がこの時期に拉致被害者と拉致された疑いのある特定失踪者の調査などの開始に応じた意図はどこにあるのでしょうか。

また、日本政府は、北朝鮮側が調査を開始する時点で、北朝鮮当局者の入国禁止など人的往来の規制、10万円超の現金持ち出しの届け出義務、人道目的の北朝鮮籍船の入港禁止といった制裁措置を解除することや、人道的見地から適切な時期に北朝鮮に対する人道支援の実施を検討することなどを受け入れたようですが、一方で、菅官房長官は、北朝鮮による調査開始と同時に制裁措置を解除するかどうかについては「見極め中だ」と慎重な答弁をしています。今までの北朝鮮の行動を見れば調査自体が眉唾ですが、日本政府のこの一手をどのようにお考えでしょうか。

――佐藤優さんの回答: 北朝鮮と交渉を開始したことは、外交戦略として正しいと思います。一般論として、交渉なくして国家間の問題を解決することはできません。

【質問】 米軍がアフガニスタン作戦の後方支援拠点として活用してきた中央アジア・キルギスのマナス空軍基地が閉鎖されるという報道がありました。

対照的に、ロシアはキルギスにあるカント空軍基地を少なくとも2032年まで存続させることで合意、タジキスタンとも軍事基地使用に関する協定を42年まで延長することで合意しているとのことですが、この時期における中央アジアでの米軍のプレゼンス低下とロシアのプレゼンス増加の背景を教えてください。

――佐藤優さんの回答: 中央アジアが再びロシアの裏庭になりつつあるのだと思います。米国がアフガニスタンから撤退した後に真空が生じると、イスラーム原理主義過激派の影響がタジキスタンとキルギスを直撃する可能性があるので、それに対してロシアが備えているのだと思います。

【質問】 米国防総省のウォーレン報道部長は6月2日、ウクライナに近く小規模の軍事顧問団を派遣する方針を明らかにしたとの報道がありました。

米顧問団はウクライナの国防改革に向けた中長期の課題について調査、米国による将来の対ウクライナ支援に役立てるということですが、こうした一歩踏み込んだ米国の動きに対して、ロシアは具体的にどのように対抗していくのでしょうか。

――佐藤優さんの回答: ウクライナ国内のSVR(対外諜報庁)、FSB(連邦保安庁)、GRU(軍参謀本部諜報総局)のエージェントを用いて、米側の動きを徹底的に調査すると思います。プーチン大統領は、米国との軍事衝突に発展しかねない事態に関しては、極めて慎重ですので、直ちに対抗措置を取ることはないと思います。

【質問】 日本政府がイタリアと軍事機密などの秘密情報を共有しやすくする情報保護協定を締結する方針との報道がありました。

イタリアは地中海を挟んで向かい合うアフリカや中東の情勢に詳しく、協定締結をテコに情報交換を活発化し、同地域でのテロや治安情報の収集を強化するとのことですが、この協定の意義を佐藤さんはどのように評価しますか。

――佐藤優さんの回答: イタリアが詳しいのは、アドリア海を挟んだ対岸のアルバニア情勢についてです。アルバニアの山岳地帯には、イスラーム原理主義過激派が拠点を有しているので、対テロ協力の観点からは意味があります。

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol038(2014年6月11日配信)より