「講座:ビジネスに役立つ世界経済」
【第48回】 生産性上昇による低インフレの可能性

〔PHOTO〕gettyimages

米国経済は「正常な」状況への回帰局面にある

米国長期金利低下の要因をあれこれ思案しているうちに、現実世界では米国長期金利が再び上昇しつつあるようだ。原稿執筆時点での米国の10年国債利回りは2.6%程度となっている。

だが、この局面は2.4%程度の水準まで急激に下げた後の反動のようなものであり、トレンド自体の転換を意味するものではないと考える。短期的には、米国長期金利は10年物国債利回りで2.7%程度を中心に当面は、一進一退の展開になるのではなかろうか。

ところで、月次の経済指標をみる限り、米国経済は相変わらず極めて緩やかな回復局面(というよりも、むしろ、リーマンショック前までの「正常な」経済状況への回帰局面といったほうがよいかもしれない)にあると考えられる。

また、この回復のペース自体は2009年の底打ちの局面からそれほど大きく変わっていない。つまり、米国経済は加速度的に回復している訳ではない。リーマンショック後、2010年から2013年にかけての4年間の平均実質GDP成長率は2.25%程度だったが、これは過去の米国の実質GDP成長率の平均値(約3%)を大きく下回っている。

現在の米国の潜在成長率がどの程度であるかは議論が分かれるところであるが、米国経済の回復ペースが潜在成長率を下回っているとすれば、むしろ、経済の需給ギャップのマイナス幅は拡大しているはずである。需給ギャップのマイナス幅拡大は低インフレの要因になりうるし、低インフレは長期金利の低下、ないしは低位安定の理由になりえることは自明であろう。

一方、雇用面から米国経済の動向をみると、ある程度、順調な回復を続けているといえる。労働参加率低下の問題で失業率の低下がやや過大に見積もられているとの指摘もあるが、今年に入って、毎月の非農業部門の雇用者数の増加が平均で雇用回復の目安となる20万人を超え始めており、労働参加率の低下を考慮してもなお、雇用は回復していると考えられる。

図1. 米国のフィリップス曲線(リーマンショック前後)
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