テレビ局はネットの普及によって圧倒的優位性を失った事実を受け止めるべき!

2014年06月11日(水) 高堀 冬彦
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通信機能のあるワープロさえもなかなか普及せず、いま50歳の筆者は30歳を迎えるころまで原稿を手書きでまとめていた。外から勤務先の会社に原稿を送る際は、FAXを探すために駆けずり回った。身近な場所にFAXが見当たらない場合、電話で原稿を読み上げ、社内に居る記者に書き取ってもらっていた。

「主語となる人の名字は山河さんです。『山』はマウンテン、『河』はサンズイのほう」といった具合で、まるで伝言ゲームだ。もしも、若年層が見たら、原始時代の光景に映るだろう。

今では記事の読まれ方も様変わりしたのはご存じの通り。90年代の筆者には電車内で読まれている新聞のシェアを目測する習性があったが、今では電車内で新聞を読んでいる人を見つけることすら難しい。大半の乗客の目はスマホ画面に向いている。

止まらない視聴率低下となくならないヤラセ番組の要因

テレビの総視聴率も低下するばかりだ。見る側がネットやスマホに時間を費やすようになったのだから、当たり前の現象である。1日に2〜3時間もLINEに興じる中高生も珍しくないという。

テレビ局側はまだ気付いていないフシがあるが、視聴率低下よりも大きな変化がある。テレビ局が視聴者に対して持っていた圧倒的な優位性の消失だ。ひとたび見る側の反発を買いそうな番組を流せば、たちまちネット上で批判され、下手をすると、番組の存続まで危うくなる。そんなとき、テレビ局側は圧倒的優位性を失ったことが分かっていないから、反発したり、うろたえたりする。

番組批判ばかりではない。インモラルな手段での収録が行われれば、それを知った人にネット上でたちまち告発される。もともとテレビ局と視聴者の関係は対等なのだが、視聴者が自分たちの声を発信する術を得たことにより、立場は完全にイーブンとなった。

ヤメ検の敏腕弁護士・落合洋司氏が5月末、ツイッターでTBS『アッコにおまかせ』のスタッフの夜郎自大ぶりを辛辣に批判したが、これもスタッフが自分たちの圧倒的優位性が失われたことに気付いていない表れだろう。

「テレビには皆が協力すべきもの、という、傲慢、独善的な、ねじれた考えが染み付いているのだろう。電話してくる奴も、頭も人間性も、いかにも低レベル。馬鹿丸出し」(落合弁護士の5月31日のツイートより)

ヤラセの問題も同じだ。昨年10月、フジテレビ『ほこ×たて』のラジコン対決でヤラセがあったことが発覚し、番組は終了を余儀なくされたが、これも露見の端緒は対決に参加した人によるネット上での告発。しかし、テレビ局側はまだ自分たちに絶対的優位性があると思い込んでいるから、ヤラセ番組は後を絶たない。

ネット時代以前は、ヤラセは新聞や雑誌が暴くというのが通り相場だった。92年に郵政省(現総務省)が虚偽放送として厳重注意したドキュメンタリー『奥ヒマラヤ禁断の王国・ムスタン』(NHK)のヤラセをスクープしたのも朝日新聞だ。外部の記者が察知し、記事化しなければ、ヤラセは露見しなかった。裏ではヤラセを暴こうとする記者と、隠そうとするテレビ局側の凄絶な攻防戦があった。

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