サッカー
二宮寿朗「米国、観客とスタジアムの幸福な関係」

 ザックジャパンは事前キャンプ地の米国フロリダ・クリアウォーターで約1週間のキャンプを終え、ブラジル入りした。ブラジルW杯グループリーグ初戦(14日、レシフェ)のコートジボワール戦に向けて、いよいよ“決戦ムード”が高まってきている。

 何故、事前合宿先が米国フロリダだったのかと言うと、主に3つの理由があった。①時差がブラジルと変わらない②暑熱対策(高温多湿の環境下に慣れる)③練習試合(コスタリカ戦、ザンビア戦)。グループリーグで対戦するコートジボワール、ギリシャも同じ目的を持って米国で調整しており、多くのチームが「米国経由ブラジル行き」でW杯本大会に臨んでいる。日本代表チームの宿舎前には、白い砂浜とビーチが広がっており、米国随一と言われるサンセットを見ることができる。日本の喧騒を離れてトレーニングにより集中するとともに、精神的にもリラックスできたようだ。

日本戦のスタジアムに海賊船!

 さて、今回のコラムは「米国とスタジアム」をテーマに挙げたいと思う。
筆者はゴールデンウイークにボクシング界のスーパースター、フロイド・メイウェザーの試合をラスベガスで見てきたばかりだが、この国はスポーツがいつも身近な存在としてあることを実感できる。

 町はスポーツに溢れている。
 レストランに入ればメジャーリーグ、NBA、NHLの中継を客が食い入るようにして見ていて、新聞もスポーツ面が大きなスペースを取っている。今、NFLがシーズンオフではあるが、一年中、スポーツを楽しめる環境がこの国にはある。メジャーリーグを筆頭に、チームスポーツには企業ではなく「オラが町のチーム」があって、地元の人々が熱心に応援している。

 今回、米国に来てみてあらためて感じたのは、「スポーツを観て楽しむ」「スポーツを楽しませる」という受け手と送り手の幸福な関係である。
 ザックジャパンのコスタリカ戦、ザンビア戦の会場になったのが、フロリダ・タンパにある「レイモンド・ジェームス・スタジアム」だ。このスタジアムは、NFLタンパベイ・バッカニアーズの本拠地。バッカニアーズとは海賊の意味で、スタジアムを彩る海賊をモチーフにした巨大エンブレムが我々を迎えてくれる。

 何より驚いたのは、スタジアムのなかに「海賊船」が設置されていること。
 ゴールドを基調とした迫力ある船は、なんと全長40メートルほどあり、重量も40トンを超えるのだという。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」に出てきそうな、リアルな感じがたまらない。バッカニアーズがタッチダウンするたびに、海賊船から大砲が打ち鳴らされるという。その大砲のアトラクションがスタジアムの熱狂を呼び、ファンの楽しみの一つになっている。ザックジャパンがゴールを挙げれば大砲のアトラクションがあるんじゃないかと期待したのだが、海賊船は静かに試合状況を見守るだけ。それがちょっと残念ではあったが……。

 ただ、海賊船以外にもスタジアムにはショップやカフェが立ち並び、観客が試合以外でも楽しめるようになっていた。日本の会場では通路にあるショップで買い物をしていると試合の状況が分かりにくかったりするのだが、このスタジアムは観客席奥のスペースにショップがあるため、何かあればすぐに試合を眺めることができるつくりになっている。観客目線に立ち、プロスポーツとエンターテイメントの融合が、見事に成されていた。