[サッカー]
田崎健太「W杯優勝メンバーが抱くセレソンへの不安」

 意外と盛り上がっていないというのが正直な実感だった。
 ワールドカップ直前のブラジルを感じたいと思い、ぼくは先月半ばまで約3週間、ブラジルにいた。この国にとってW杯は特別である。

冷やかな現地のムード

 これまで何度かW杯期間中にブラジルに滞在したことがある。ブラジル代表の試合が始まると、文字通り街の動きが停まる。商店はシャッターを下ろし、道路から車が消える。魔法で街から人を消し去ったかのような錯覚に陥るほどだ。

 彼らはブラジル代表のユニフォーム、応援グッズを持ってテレビの前に集まり、試合を観る。ブラジル代表が得点を挙げると、街が息を吹き返したかのように、あちらこちらから歓声が聞こえ、花火が打ち上げられる――。

 ところが、開幕を控えたブラジルは驚くほど冷ややかだった。大都市サンパウロやリオ・デ・ジャネイロの街のインフラは経済成長に追いついていない。空港は過密発着、幹線道路は朝晩に大渋滞――。ここにW杯の観光客が来ればどうなるのかと、人々は戦々恐々としていた。

 ブラジル国民の冷ややかさの裏側にはブラジル代表に対する不信もある。

 FCバルセロナのネイマールやダニエウ・アウベス、チェルシーのオスカー、あるいはレアル・マドリーのマルセロ――ブラジル代表メンバーは世界のビッグクラブに散らばっている。しかし、ネイマールを除けば、かつてのように世界屈指の選手が集まったという感じはしない。

 また、ロナウジーニョのようなブラジルらしい香りをぷんぷんとさせた選手が落選した。要するに、地味なのである。