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「年金破たん危機」を隠ぺいするGPIF改革の虚妄
                                                                                                         Thinkstock / Getty Images

10年前の年金改革は、本当に、当時の自公連立政権が自画自賛したような「100年安心」なものだったのだろうか。「失われた年金記録」やグリーンピア事業に代表される「流用問題」に揺れ、何度も国民を失望させてきた公的年金の分野で、またまた、おかしな動きが起きている。

その第1は、厚生労働省が、年金制度の破たんを防ぐために法律で義務付けられている「5年に1度」の財政検証をおざなりに済ませた問題だ。

第2が、年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が自家運用(インハウス運用)に乗り出すことと、日本株での運用比率を高める検討を進めている問題だ。我々のかけがえのない年金の積立金が株式相場とアベノミクスの買い支えに流用されかねない。

年金問題というと、「またか」と多くの人はうんざりするはずだ。しかし、すべての世代の人々にとって、政権や与党、厚生労働省に任せにできない深刻な問題だ。

年金財政めぐる厚労省官僚の主張は「安心してほしい」

厚生労働省は先週(6月3日)、『将来の厚生年金・国民年金の財政見通し』を公表した。

この見通しの公表は、国民年金法と厚生年金保険法が「少なくとも5年に1度」の割合で行うことを政府に義務付けているものだ。2つの法律は、今後100年間にわたる年金の収支見通しを作成し、年金財政の健全性が保たれるか検証するよう定めている。つまり、2004年の年金制度改革時に、当時の自民、公明連立政権が唱えた公的年金の「100年安心」が破たんしていないか検証するものだったわけだ。

しかし、その中身は、法律の趣旨通り、年金財政の現状と展望を直視するものだったとは言い難い。

試算は、民間サラリーマン世帯(夫婦)に注目して、将来の、現役世代の平均収入と、退職者世帯の年金の給付額の水準を比較したものだ。前提になる人口の増加率や経済成長率を変えて、8つのケースの試算を行い、5つのケースで、「現役世代の平均収入の50%以上」が維持できるという内容になっている。

「過半に当たるケースで大丈夫なのだから、安心してほしい」という厚生労働官僚たちの主張が透けて見えるものと断じてよいだろう。

しかし、年金を取り巻く経済成長率や人口、雇用情勢、さらには期待できる資金運用の利回りといった、試算の前提の置き方が楽観的過ぎるため、新聞やテレビから集中砲火を浴びる結果になったのは周知のとおりである。

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