「残業代ゼロ」議論は間違いだらけ!国家公務員の労働実態を正しく理解し、議論は「官より始めよ」

2014年06月09日(月) 高橋 洋一
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この対象になっている労働者は、専門業務型といわれる①研究開発②情報処理システムの分析・設計③取材・編集④デザイナー⑤プロデューサー・ディレクターなど19業種(労働基準法38条の3)と、企画業務型といわれるホワイトカラー労働者(労働基準法38条の4)で、労働者に占める割合は8%程度だ。

ただし、制度の運用は厚労官僚のさじ加減ひとつであり、はっきりしない部分が多く、使い勝手が悪い。こうした意味で、ホワイトカラー・エグゼンプションと裁量労働は似て非なるものだ。皮肉を込めて言えば、裁量労働制とは、労働者の労働時間の「裁量」ではなく、厚労官僚の「裁量」を尊ぶ制度だ。ホワイトカラー・エグゼンプションには、厚労官僚の裁量の余地はまったくない

産業競争力会議の議論は、このままいくと、厚労省案のように、民間の専門業務型・企画業務型の非定型業務において、一部、労働基準法の適用除外とするが、そのほかではそのまま労働基準法を適用した裁量労働のままになりそうだ。その一方、国家公務員では、すべて労働基準法の適用除外のままだ。

「定型業務」の公務員には労働基準法を適用するべき

最後に、望ましい制度改正を考えよう。

官民で労働基準法は同じく適用すべきであるという原則(地方公務員は労働基準法が適用される)から見れば、民間と国家公務員のアンバランスは説得的でない。

この際、国家公務員でも労働基準法を定型業務職員には適用すべきである。そうすれば、民間での労働基準法の適用除外が広がりかねないという心配はなくなるだろう。広がる場合には、国家公務員も同じ条件になるからだ。

その一方で、民間に対して、一定の非定型業務(具体的な対象範囲は全労働者の8%程度の現行裁量労働制の対象業務をベースに検討)で、労働基準法の適用除外を認めるべきだ。ただし、この場合、労働時間だけを労働基準法の適用除外にして、労働基準監督者の立ち入り調査では労働基準法を適用させるべきだ。

産業競争力会議の民間議員も、厚労省も、民間ばかりを対象として議論しているので、なかなか折り合えない。国家公務員を一緒に処理すれば、お互いが納得できる案ができる、これは、幾何の問題を解くときに補助線を一本入れて解くのに似ている。

せっかく総理の下で産業競争力会議が議論するのであるから、国家公務員まで含めていい制度改正をしてほしいものだ。
 

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