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あなたは会社を辞めますか「がん社員」の苦悩——55歳から急増する発病、そして再発
きつい闘病社内の白い目 蓄えはどんどん減っていく……

入社から30年超の月日が経った。会社にある程度の貢献をしてきた自負はある。このまま想定どおりのサラリーマン人生を送るはずだった—が、ある日突然、がんが発覚。一体、どうなってしまうのか。

元部下から陰口を叩かれる

「前田はもうダメですね。がんをやってようやく復帰したけど、扱いづらくって。すっかりやつれて、残業もできないですし、見ているこっちのほうもしんどくなりますわ。病気になったのは気の毒ですけどね、もう先も長くないんだから、潔く早期退職したほうが会社のためってもんですよね」

大手電機メーカーに勤める前田史彦さん(57歳・仮名)が、自分についてのこんな話を耳にしたのは、休職から復帰した1週間後のことだった。

「私の部下だった同期入社のAが、取引先にこんなことを言って回っていると聞いたんです。がんを患って5ヵ月間会社を休んでいたのですが、復帰すると、職場の雰囲気が以前と変わっていた。社内でAに会っても無視されるようになったんです。

お前に俺の気持ちが分かるか、と怒りが込み上げてきましたが、以前のように働けなくなったのは事実。その鬱憤をどこにぶつけていいかもわからず、空しくなりました」

前田さんは、営業部長だった55歳のときに受けた人間ドックで肺がんが発覚。抗がん剤治療と手術を経て体調こそ回復したが、職場に復帰するとこんな現実が待っていた。

営業でトップクラスの成績を上げていた前田さんは、同期の誰よりも早く課長へ昇進し、休職前は30人超の部下を従え、社の重要なプロジェクトを任されていた。だが、復帰をすると担当していた仕事はすべて他部署へ分配されていたという。

「名刺こそ部長のままですが、部下は8人に減り、仕事量は以前の4分の1くらいになりました。身体がきつそうだということで会社が配慮してくれたからでしょうし、部長職のままでいられるのは、病気をする前の私の仕事が評価されていたからだと思います。でも正直、仕事のやりがいはない。『病気だったんだから仕方ない』と自分で自分を納得させるしかありません」

55歳、会社員。順調なサラリーマン人生を歩んでいれば、実績を重ね、責任ある役職についている人も多い年代だ。このまま平穏に定年を迎えられるものと思っていた矢先に突然、がんを宣告される。患った途端、サラリーマンの人生は一変してしまう。前田さんのように、現実を受け入れられず、苦悩する「がん社員」は多い。

年々がん患者は増え続けている。国立がん研究センターが先日発表した最新の統計では、1年間に新たにがんにかかる人は80万人超。男性の場合、生涯でがんを患う確率は60%(女性は45%)と試算されている。じつに5人に3人が、がんを経験するのだ。