【国土交通 その9】 海猿・海上保安庁の能力の抜本的な拡充を!
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「どんなに絶望的な状況でも、可能性はある。あきらめるな!」

映画「海猿」で俳優の伊藤英明さん演じる仙崎大輔は、厳しい訓練の後、海難救助の最前線である潜水士となった。「海猿」だ。彼らは、海難事故が起きたときに真っ先に現場に駆けつけて救助にあたる。

過酷な現場でも絶対に諦めずに海を守るのだ。映画やドラマで人気を博した「海猿」によって、海上保安官たちの過酷な現場を知り、海を守る仕事の重要性を認識した人も多いだろう。

世界で6番目に広大な日本の排他的経済水域・国土の12倍もの広さの海、6800を超える島々を守るため、海難救助、国境警備、密輸・密漁捜索など危険と隣り合わせの最前線で、海上保安官たちは命がけで活動している。

特に、2010年に起きた尖閣諸島中国漁船衝突事件以降、相次ぐ不審船・工作船の接近、大規模な海難事故なども多発し、国境の最前線で日本の海を守る海上保安庁の重要性は大いに高まっている。

しかしながら、海上保安庁の定員は13000人弱、予算も1,800億円程度と、東京という一都市を守る警視庁と比べても定員・予算ともに約1/4であり、国土の12倍もの水域を守る役割と比べてその規模は極めて小さい。日本の国益を守るため、海上保安庁の機能強化は不可欠だ。

1. 海上保安庁の体制・予算・人員・装備の抜本的強化を!

2010年9月7日、尖閣諸島付近の海域をパトロールしていた海上保安庁の巡視船「みずき」が中国籍の漁船を発見した。日本領海からの退去を命じるも、それを無視して中国籍漁船は違法操業を続行、逃走時に巡視船「よなくに」及び「みずき」に衝突し2隻を破損させた。海上保安庁はこの悪質な行為に対し、同漁船の船長を公務執行妨害で逮捕し、石垣島に連行した。

2010年に発生した中国による尖閣諸島漁船衝突事件は、中国の膨張主義の常套手段だ。中国は戦争ではなく「平時」の海において、民間たる「漁船」による「侵略」ならぬ「侵出」を繰り返し、それを徐々に常態化させていく。

その民間たる漁船を守る、すなわち「関係海域周辺の漁業生産秩序を維持し、漁民の生命・財産を保護する」ことを目的として、政府の農業部漁民局所属の漁業監視船を派遣し行政権の行使を既成事実化していく。そして、徐々に警察権の行使、そして防衛権の行使と既成事実を広げていくことで、版図の拡張を狙っているのだ。

2013年7月22日には、正式に農業部漁民局(いわゆる漁政)を含めて、中国海警局が発足し、同月26日に中国海警局の公船「中国海警」4隻が尖閣諸島の領海を初めて領海侵犯した。

現代の領土・領海防衛においてここで分かることは、軍事ではない、非軍事の行政権・警察権の機能の重要性だ。軍事権の行使による国際紛争になる手前の警察権の行使の段階で、日本の海を守る非軍事の機能強化が日本にとっては重要なのだ。特に隣国にあからさまに海域の侵出を狙っている大国がある以上、日本にとって海上保安庁の機能強化は待った無しの状態である。

幸い、尖閣事案以降、海上保安庁の任務の重要性は高く認識され、予算の拡充・新たな1000トン級巡視船の整備、海上保安官の増員などが進められている。また、昨年には、安倍総理の肝いりで、初めて海上保安庁長官に生え抜きの現場出身者が抜擢された。

海上保安庁の長官ポストは、これまで国土交通省のキャリア官僚、もしくは旧運輸省から出向したキャリア官僚の指定席となっていたが、これで現場の海上保安官の士気は多いに鼓舞されたであろう。

東シナ海における中国からの脅威は益々高まっており、今後海上保安庁の重要性はさらに高まっていく。しかしながら、現状ではいまだに、定員13000人弱、予算1,800億円程度と、海上保安庁の規模は一地方警察の警視庁の約1/4である。

また、保有する約450隻の巡視船艇なども1970年代に配備されたものが多く、老朽化、速力不足が深刻だ。国境の最前線で日本の海を守る海上保安庁の人員・装備を抜本的に強化する必要がある。

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