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60すぎたら、どんどん捨てなさい【part4】中途半端はよくない
捨ててこそ、楽しい人生が始まる!

中途半端はよくない

盆暮れの挨拶や年賀状だけの付き合いも、60を過ぎたら整理の対象だ。元教師の佐藤重一さん(68歳・仮名)が言う。

「中学校の教師をしていたので、教え子との年賀状、盆暮れの贈り物のやりとりも多かった。結婚式の仲人などを頼まれることもありました。現役のころはそれが嬉しくて、年賀状は友人への分も合わせて500枚以上書き、仲人も多いときは年間5組くらいやっていました。

でも、3年前に『これで新年の挨拶は最後になります』という賀状を出して、一切やめたんです。そして、自宅の電話をFAX専用にして、親戚や子供にだけ携帯電話の番号を教えました。それ以外の人からは、連絡が一切来ないようにしたんです。仲人も引き受けないし、教え子の同窓会にも行きません。なんて冷たい先生なんだ、と思われているでしょうね。でも、もう体力的に、すべてをこなすことはできない。中途半端にやって気がかりを増やすくらいなら、いっそ全部やめてしまおうと思ったんです。残された時間は妻と一緒に旅行でもして、のんびりと自分のために過ごしたいと思っています」

人間関係を清算しようとすれば、非難されたり、顰蹙を買うのはある程度覚悟しなければならない。良心の呵責に悩まされることもあるだろう。だが、そんなことは気にする必要はないと言うのは作家の曽野綾子氏だ。

「私は若いときから、ある程度、人からは顰蹙を買うものだと覚悟してきました。私は小説で表現を学んだので、自分の思いはなかなか人に伝わらないものであり、それはそれで仕方がないということを知ったのです。もちろん、誤解を解く努力は必要ですけれど……時には諦めることも、たぶん魂の健康のために大切ね。それに、一度悪く思われると、あとはかえって気が楽になるときもある。現実の私は、現実以上でも以下でもないのですから。それでいいんですよ」

エッセイストの岸本葉子氏(52歳)も、他人から嫌われることを恐れるなとアドバイスする。

「すべての人に好かれようと合わせる必要はありません。私も、人間関係を整理するうえで、嫌味を言われたこともありました。でも、顰蹙を買って何か実害があるかといえば、意外とそうでもないのです。築き上げてきた人間関係を手放すのは怖いと感じるかもしれませんが、必死に掴んでおいた友人の何割が、いざ自分が困ったとき本当に助けてくれるでしょうか。着ないままタンスの肥やしになっている服と同じで、無理してまで持ち続ける必要のない人間関係が意外とあるはずです」

それでもやはり、「捨てる」という行為に躊躇してしまう人も多いだろう。まずは、直木賞作家・藤田宜永氏(63歳)のようにしていくのもいいかもしれない。

「人間関係にしても遊びにしても、仕事をリタイアしたら、もう伸びしろはありません。そのぶん、自分の好きな人と付き合い、したいことをやればいいと思いますよ。働いているときほど人間関係にこだわる必要はありません。ゆるくていいんです。べたべたしていないけど深い関係。自分がストレスなどを感じずに、気分良くいられるような関係を探すんです」

人間関係をすっきりさせれば、これからの人生で大切なもの、必要なものが見えてくる。まずは無意識に抱え込んできた、人間関係の整理から始めてみてはいかがだろう。

 「週刊現代」2014年3月1日号より