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捨ててこそ、楽しい人生が始まる!60すぎたら、どんどん捨てなさい【part3】去る妻も追わない

去る妻も追わない

今のところ、妻はまだ子を捨てられずにいる。そのため山本さんは、妻から「息子の将来を考えていない」と非難される日々だというが、根気よく説得を続けている。息子は息子と割り切った今、夫婦二人で充実した日々を過ごしたいという思いがあるからだ。

その「妻」を捨てざるを得ないこともある。自分にはその気がなくとも、妻側から「もうあなたと暮らすのはまっぴら」と、三行半を突きつけられてしまうケースだ。

一度離れてしまった女性の心は、なかなか引き戻せない。特に、長年連れ添った結果、決意した熟年離婚の申し出ならなおさらだ。この場合は、捨てられたと恨むのではなく、「妻を捨てた」と気持ちを切り替えることが必要だ、と語るのは実践者の蒲田健夫さん(70歳・仮名)だ。

「僕はこれまで、奥さんから離婚を突きつけられた連中を何組か身近で見てきました。皆うろたえて、なんとか引き留めようとやっきになっていたけど、結局離婚。その後の生活が哀れなものになるというのも知っていたので、私は妻との関係が冷えきり、定年を期に離婚するのが暗黙の了解になった頃から、自分のことはなるべく自分でするようにし、簡単な料理も練習しました。だから、いざ離婚を突きつけられた時、非常にスムーズに、円満に別れることができました」

熟年離婚をした男性は、独りになると心身が弱ったり、孤独感に苦しむことが多いと言われる。では、蒲田さんはどのような暮らしをしているのだろうか。

「独り身になって、毎日が気楽です。妻とはお互いに干渉せず、無関心で生活しているつもりでしたが、実際には最低限の気を遣っていたんだなということがよくわかりました。

今は自分の好きな時間に起きて、好きなものを食べて、あとは趣味の釣り三昧。子供や友人からは一人暮らしを心配されるけれど、これで倒れたってかまわない。後悔はありません。付き合っている女性もいますよ。ただし、結婚する気はありません。もう面倒は背負いたくない(笑)」

サラリーマンなら特に、現役の時に築いた人間関係を「捨てる」のは勇気がいる。人生の大きな部分を占めていたものを、まるまる失う気がするからだ。だが、これも60歳からの新たな人生では不要だと語るのは、戸崎一郎さん(70歳・仮名)だ。有名私大卒で上場企業の管理職だった戸崎さんは、定年後、かつての仕事仲間との付き合いをほとんど「捨てた」。

「現役時代の友人とは、定年と同時に、自然と連絡を取らなくなりました。これはつまり、本当の友人ではなかった、ということだと思っています。今は、地域の山岳サークルに入っています。そこで出会った仲間との付き合いは、気持ちがいい。彼らは学歴も職歴もかつての同僚たちと比べれば低いですが、人間的に立派で、心から尊敬できる人もいる。ここ数年、飲みに行くのはそうした気楽な人たちです。会社の仲間は、どんなに親しくても、やはり利害関係と無縁ではいられない。損得抜きの関係こそ、歳をとるとありがたいと痛感します。上辺だけの友人がたくさんいても、気疲れするだけで何の意味もない」

 「週刊現代」2014年3月1日号より