「モノのインターネット」の出現で資本主義システムが根底から崩れはじめた
現代ビジネスブレイブ グローバルマガジン『ニューヨークタイムズ・セレクション』より

資本主義のパラドックスは音楽業界からはじまった

一世を風靡した「Napster」は2010年5月31日をもってサービスを終了した---〔PHOTO〕gettyimages

いま、われわれは、資本主義の核心部で起こっているパラドックス、すなわち、資本主義を偉大なものへと推し進めてきたもの自体が、その将来をおびかすようになるという状況を目の当たりにしている。

本来は競争力を高めるために市場に備わったダイナミズムによって、コストがあまりにも引き下げられたため、多くの商品やサービスがほぼ無料かつ豊富になり、もはや市場の力に左右されなくなってきている。経済学者たちは常に限界費用(※)の低減を歓迎してきたが、技術革新によって、それがゼロ近くまで下がる可能性があるとは予想だにしなかった。

そのパラドックスの最初の兆候は、1999年にはじまった音楽サービス「ナップスター(Napster)」が登場したときに現われた。

ナップスターは、プロデューサーやアーティストにお金を支払うことなく、何百万人もが音楽を共有できるネットワークを開発し、音楽業界に大混乱をもたらした。同じような現象によって、新聞や書籍の出版業界も大きく破壊された。消費者たちは従来型の市場をまったく無視し、ビデオやオーディオ、テキストなどを通じて、情報や娯楽をほぼ無料で共有しはじめた。

(※)生産量を小さく一単位だけ増加させたとき、総費用がどれだけ増加するかを考えたときの、その増加分を指す。

3Dプリンターでアマチュアが製品を作れる時代

3Dプリンターで作った製品---〔PHOTO〕gettyimages

限界費用の大幅な縮小は、音楽業界や出版業界を大きく揺さぶった。それがいまや、エネルギー産業、製造業界、教育業界の再編成をも促している。太陽エネルギーや風力技術に必要とされる固定費は大きいものの、その先の、一単位ごとのエネルギーを確保するコストは小さい。こうした現象は、製造業界でも広がっている。

すでに何千人ものアマチュアが、リサイクルされたプラスティックを原材料として使い、3Dプリンターとオープンソースのソフトウェアを利用して、限界費用をほとんどかけずに自分らの製品を作っている。また、600万人以上の学生が、ゼロに近い限界費用で配信されるコンテンツを使用した、無料の大規模なオンラインの公開講座に登録している。