佐藤優さんに質問---「ネオナチ勢力」とされている右派セクターを、なぜユダヤ系富豪のコロモイスキー氏が支援しているのでしょうか?

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol037 質疑応答より

【質問】 佐藤さん、こんばんは。今月からインテリジェンス・レポート購入させていただきました。よろしくお願い致します。早速、質問させていただきます。

安倍首相は、6月4~5日にベルギー・ブリュッセルで開かれるG7に合わせてイタリア・ローマを訪問する方針を固め、また、来年が仙台藩の支倉常長率いる慶長遣欧使節団がローマ法王に謁見して400年の記念の年にあたることから、バチカンで法王フランシスコと会談し、長年の友好関係を確認する方向で調整しているという報道がありました。

私は、対中国共産党包囲網という意味で、バチカンと緊密な関係を築く必要性を常々感じていましたが、安倍首相の今回のバチカン訪問及び法王との会談の一番の狙いはどこにあるのでしょうか。

――佐藤優さんの回答:外務省がどういう振りつけをするかによりますが、この機会に中国における信教の自由の問題に触れることには、大きな意味があります。信教の自由、国境線の不可侵など、国際社会において確立したルールを守ることが重要であるというメッセージをあらゆる機会を通じて中国に投げかけることが日本の国益に貢献すると思います。

【質問】 『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』(福田ますみ著 2010年 新潮社)を読みました。 著者の見解では「ノーバヤ・ガゼータ」紙以外のロシアの新聞は全て国家の御用メディアであるという論調です。佐藤さんは正確な記述だと思われますか。私は自由主義国家ロシアにおいてそのような状況というのは大袈裟な記述ではないかと思ってしまったので佐藤さんの意見を伺いたいです。

――佐藤優さんの回答:福田ますみさんは優れたノンフィクション作家です。物事は、作家の切り口、情報の取捨選択、構成によって、かなり異なって見えてきます。

従って、福田さんの「読み解き」は、それなりの意味があります。私は、「ノーバヤ・ガゼータ(新しい新聞)」の影響力は限定的で、ポリトコフスカヤ記者は、マフィアとの関係に深入りしすぎたのが暗殺の原因と思っています。プーチンが暗殺したとの見方は取りません。

私の見方の根拠は、プーチンはジャーナリスト暗殺をした場合のマイナスを合理的に計算できると認識しているからです。

【質問7】 佐藤優さんのご著書に感銘を受け、最近メルマガをとり始めたものです。私自身クリスチャンということもあって毎号、楽しみに読ませて頂いております。お伺いしたいのは、ウクライナ事情についてです。

「ネオナチ勢力」とされている右派セクターを、なぜユダヤ系富豪のコロモイスキー氏が支援しているのでしょうか? このためネットでは「ユダヤが支援しているのだから、右派セクターはネオナチではない」とする言説も見受けられます。ウクライナでの円滑なビジネスを望むコロモイスキー氏と、スポンサーを求める右派セクターの利害が一致したためという理由が考えられますが、それにしても双方の主義や歴史的経緯を考えると理由としては弱いような気がします。この点について、佐藤さんのご意見を伺えれば幸いです。

――佐藤優さんの回答:反ユダヤ主義者にユダヤ人が協力することは、それほど珍しい事例ではありません。ナチス・ドイツとも、当時のドイツのエスタブリッシュされたユダヤ人は、「取り引き可能」と考えました。ウクライナの「スボボダ(自由)」や「右派セクター」については、個々の人間関係ではなく、この政治勢力の原動力となっているイデオロギーに注目すべきです。

また、ウクライナの東部、南部の反政府勢力(いわゆる親露派)にも反ユダヤ主義的気運が醸成されつつあります。ポグロムの歴史を見ればわかるように、反ユダヤ主義はウクライナの病理です。

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol037(2014年5月28日配信)より