佐藤優のインテリジェンス・レポート---「なぜロシアは安倍政権に好意的なのか?」ほか
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol037 インテリジェンス・レポートより
【はじめに】

安倍政権が憲法解釈の変更による集団的自衛権行使を容認しようとするのに対し、創価学会が異議申し立てをした件が、今後の日本の政治構造を変化させるきっかけになるかもしれません。創価学会という言葉を聞くと、忌避反応を示す人も多いのですが、自らの好き嫌いを一旦、括弧の中に入れて、中間団体という観点で、創価学会が果たしている機能を等身大で分析することが重要です。私の見方を率直に記しました。

4月に上梓した『宗教改革の物語――近代、国家、民族の起源』(角川書店)の重版が決定しました。私が何を考えているか、かなり踏み込んで書きました。この作品について読者の感想をぜひ、うかがいたいと思っています。どんな質問でも、遠慮なくお寄せください。お待ちしています。

分析メモ No.83「なぜロシアは安倍政権に好意的なのか?」

【事実関係】
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は5月14日の記者会見において、ナルィシキン・ロシア国家院(下院)議長について「日本の渡航禁止のリストに入っていない」と強調した。

今年の3月24日に行われたG7会合の様子〔PHOTO〕gettyimages

【コメント】
1.
ウクライナ危機をめぐって、ロシアと米国・EU(欧州連合)の関係が緊張を増しつつある。そのような中で、安倍政権は、G7(日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ)との連携という建前を維持しつつ、ロシアとの関係を崩さないように、細心の配慮をしている。日本政府のこのような姿勢をロシアは肯定的に評価している。

2.―(1)
ロシアの本音がよく表れているのが、5月14日にロシア国営ラジオ「ロシアの声」が日本向けに行った「進退窮まる日本」と題する論評だ。

<日本政府は、平和条約問題に関する外務次官級協議の定例ラウンド実施を拒否してはいない。これは12日、日本外務省の斎木昭隆外務事務次官が述べたもので、事務次官は「協議は日本側によって一方的に中止された」とのマスコミ報道を否定した。日本はまさに今、進退窮まった状態にあると言ってよい。

一方で協議継続という決定は、ウクライナの政治危機に関連して、米国やG7のパートナー国からは不満を呼び起こす可能性があるものの、日本政府にとっては、ロシアとのこれまでの交渉で築き上げた成果を捨てたくないというのが本音だからだ。>

「ロシアの声」は国営放送なので、ロシア政府の立場に反する内容の報道は行わない。

2.―(2)
5月9日夜、共同通信が以下の記事を配信した。

ロシア外交のキーパーソンとなる斎木昭隆氏〔PHOTO〕gettyimages

<政府は9日、ウクライナ危機でロシアと対立する欧米諸国と歩調を合わせるため、北方領土問題に関する日ロ外務次官級協議を当面見合わせる方針を固めた。外務省幹部が明らかにした。

4月下旬に予定していた岸田文雄外相の訪ロ延期に続く措置。混乱が続くウクライナ情勢が沈静化するまで次回協議の日程調整に入らない方向で、北方領土交渉は停滞する可能性が高まった。

次官級協議の見通しについて、外務省幹部は9日、記者団に「先進7カ国(G7)が対ロシアで連携している時に、日本だけ協議を進めるのは難しい。スト破りのような行動は取れない」と述べた。>

この記事は事実と異なる内容なので、日本ではほとんど取り上げられなかったが、ロシアでは、「日本が対露政策を変更するシグナルではないか」と大きく取り上げられた(5月14日配信の本メルマガ第36号の分析メモNo.82「谷内正太郎・国家安全保障局長の訪露」を参照願いたい)。

2.―(3)
斎木昭隆外務事務次官が、この報道をはっきりと否定したので、クレムリンを含むロシア側の誤解は解消された。ロシアは、安倍政権が斎木氏を対露外交を策定するに当たってのキーパーソンのひとりと見ている。・・・・・・

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol037(2014年5月28日配信)より