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ジャーナリズム先進国でも簡単に明るみにはできない

暴露:スノーデンが私に託したファイル
著グレン・グリーンウォルド
価格:1800円(税抜)⇒Amazonはこちら

インターネットの電子メールがすべて他人に盗聴されていたら、どうなるか。考えただけでも恐ろしいが、米国の政府機関が世界中のメールを大量に収集し、保存していた事実があきらかになった。米国の国家安全保障局(NSA)と中央情報局(CIA)に籍を置いた元職員、エドワード・スノーデンの内部告発である。

スノーデンの告発は英国ガーディアンと米国ワシントン・ポストなどによって報じられ、両紙はその後、米国の報道界で最高の栄誉とされるピューリッツァー賞を受賞した。最初に報じたガーディアンの契約記者である、グレン・グリーンウォルドは最近、スノーデンへの取材に基づく著書(邦題『暴露・スノーデンが私に託したファイル』、新潮社)を世界同時発売した。

この本は米国の最高機密を暴露したという点で意味があるが、それだけでなく、スクープ記事を放つまでの経過についても詳細に描かれている。私は、むしろそこを面白く読んだ。これだけの大スクープなら、普通の読者は「新聞が飛びつくのは当たり前だ」と考えるだろう。実はジャーナリズムの先進国である米・英でも、必ずしもそう簡単に事は運ばないのだ。

この出来事は日本のジャーナリズムやジャーナリストにとっても、考えさせられる点を含んでいる。そこで今回は、この本を素材にしてジャーナリズムへの教訓を探ってみる。

はじまりはスノーデンからの接触

『暴露・スノーデンが私に託したファイル』著者のグレン・グリーンウォルド氏---〔PHOTO〕gettyimages

スノーデンが暴露した事実が文句なしの衝撃であったのは議論の余地がない。NSAは組織として世界中のインターネットや電話回線に秘密潜入して、通話や電子メールはもちろんフェイスブックやツイッター、スカイプ通話などSNSを含めたあらゆる通信記録を収集、分析、保存していた。その件数は兆単位にのぼる。

当初は米国に敵対する国やテロリストに関する情報が中心だったが、やがて一般の米国民も対象になり、そこから英国やフランス、カナダ、ドイツなど世界中に広がっていった。その中には、日本ももちろん含まれている。

驚くのは、ベライゾンのような電話会社やマイクロソフト、グーグル、ヤフー、AOLといったおもなインターネット関連企業がそろってNSAに協力し、顧客情報を提供していた点だ。会社側は情報提供の協力を否定しているが、スノーデンが暴露したNSAの秘密ファイルには協力の動かぬ証拠が含まれていた。本の筆者であるグリーンウォルドも「協力していたのは間違いない」という見解だ。

さて、そこで本題である。

グリーンウォルドに情報提供するつもりで最初に接触したのは、スノーデンの側からだった。グリーンウォルドはもともと弁護士だったが、その後、政治関係の記事をブログで発表するジャーナリストに転身した。スノーデンはかねてからグリーンウォルドの記事を読んでいて「これなら信頼できる」と踏んだのだ。

スクープを出し渋るガーディアン誌、迫られる決断

だからといって、いきなり特ダネ情報を提供したわけではない。最初はメールで慎重なやりとりをする。スノーデンは自分の意図や正体を明かさないまま、グリーンウォルドに執拗に「暗号ソフト」の利用を勧めた。暗号ソフトが使えないのでは、秘密を明かそうにも、たちまち当局に知れてしまうから(自分がその道の専門家である)会話ができなかったのだ。

そうとは知らないグリーンウォルドは最初、イタズラかもしれないと思って数カ月もメールを放置してしまう。そうこうするうち業界仲間のドキュメンタリー映画作家から「大事な話がある」と誘われ、やがて香港に飛び、そこに滞在していたスノーデンとの接触に成功する。

ここから先は映画のような展開になるのだが、詳しくは原著を読んでいただきたい。問題はスノーデンと会って、超ド級の秘密を聞いてからだ。記者のグリーンウォルドはもちろん、すぐさま契約先のガーディアン(米国・ニューヨーク)に記事を送り、直ちに発表するよう求める。ところが、編集者はウンと言わない。

なぜか。ガーディアンは「これほどの特ダネなら、当事者である政府筋にニュースを事前にあてて確認を取る必要がある。加えて、記事を発表した場合、会社に対する影響や政府の反応について事前によく検討する必要がある」と判断して、編集者と弁護士グループが協議に入ったからだ。

ガーディアンは英国本社から編集責任者が米国に飛んできて、本腰を入れ始めるが、時間は刻一刻と過ぎていく。同業のワシントン・ポストにも情報が流れていることが分かり、もしかしたらワシントン・ポストにスクープの先を越されてしまうかもしれない、という状況になった。書いた記者にとっては、苦しい状況だった。・・・・・・この続きは、現代ビジネスブレイブ「イノベーションマガジン」vol077(2014年5月21日配信)に収録しています。

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