読書人の雑誌『本』
『女系の総督』著:藤田宜永---ヒントはカミさん(小池真理子)でした
女系の総督』著:藤田宜永
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女系の総督』は家庭小説です。これまでも家庭を描いたことはありますが、家族の繫がりと問題を真っ正面から取り上げたことはこれまで一度もありません。

タイトルから分かるように、女系家族のお話です。
主人公の森川崇徳さんは、男の家族に恵まれず六十歳になった家長。今ひとつ理解しにくい女性たちの言動に振り回されつつも、何とか束ねていくのが崇徳さんの役目であります。ですから〝女系の総督〟なのです。

ヒントをあたえてくれたのは、カミさん(小池真理子)の家族でした。女系というほどのことはないのですが、カミさんはふたり姉妹の長女。父親以外に家に男はいませんでした。小池家を訪ねた折、母親と娘ふたりのおしゃべりについていけず、途中で中座する父親を何度見たことか。僕はそれなりにフォローしたのですが、「パパ、そろそろ寝たら」なんて言う女たちの一言に気圧され、父親が姿を消すこともありました。

その父親の立ち居振る舞いが、僕の頭に残っていたのかもしれませんが、具体的に、この話を書こうと思い立ったきっかけをあたえてくれたのはカミさんと彼女の妹です。

最近はそうでもないのですが、一時、小池姉妹はよく喧嘩をしていました。
「・・・・・・あの子ったら、もう・・・・・・。二度と口ききたくない!」
電話を切った後、こんな感じで苛立っているカミさんの愚痴を聞かされるのは僕でした。
妹は妹で、僕と電話で話している時に〝大変ね、お姉ちゃんみたいな人と一緒になって〟なんてきつい調子で、姉に対する憤懣やるかたない気持ちを僕にぶつけてきたこともあります。

しかし、このふたり、本当に仲が悪いかというと、決してそうではないのです。愉しそうに長電話をすることもよくあって、内心、いい加減にしてくれよ、と思ったことも一度や二度ではありません。
僕は、姉妹の関係がよく分からず、一緒になった頃は、「そんなにぶつかるんだったら、一生会わなきゃいいじゃん」と一刀両断に切り捨ててました。
それが大きな間違いであることに気づくのには少し時間がかかりました。
母子にしろ、姉妹にしろ、女性同士の家族としての結びつきは、男性には分からないというか、ついていけないところがあるものです。