ドイツ
ドイツ国民の7割が「どうでもいい」と考えるEU議会選挙
[左]ジョン=クロード・ユンカー氏、[右]マーティン・シュルツ氏〔PHOTO〕gettyimages

EU議会選挙が迫ってきたが、関心の高まらないのはドイツだけではなく、EU全体の傾向のようだ。28ヵ国、5億人を包括するEUは、はっきり言って広がり過ぎ。モンゴル帝国のように茫々としている(←これは私見)。

5月8日、EUの保守会派のトップ、ジョン=クロード・ユンカー氏と、革新会派のトップ、マーティン・シュルツ氏のテレビ討論が行われた。保守のユンカー氏は、1995年から去年まで18年間、ルクセンブルクの首相を務めていた人物だ。そのうえ2005年からはEUのユーログループの議長でもあったので、特にEUが金融危機で混乱してからは、しょっちゅうニュースに登場していた有名人。

一方、革新のシュルツ氏はドイツ人で、1994年からずっとEU議会に座っている古参議員。2012年よりEU議会の議長を務めているため、こちらもしょっちゅうニュースには顔を出す。

ところが、驚いたことに、一騎打ちの後のアンケートで、今までこの2人を知らなかったと答えた人が3割もいた。今回の選挙についても、第2テレビのアンケート結果によれば、国民の7割が「どうでもいい」と考えている。

大切なことはすべてドアの向こう側で決められる

そもそもEU議会とは何か? これは、各国の選挙で選出された議員が集まって作られている議会だ。選挙のやり方は各国に一任されている。今回は、5月22日から25日までのあいだに選挙を行うと決められており、ドイツでは選挙がいつも日曜日に行われるので、投票日は25日。EU全体で計751人の議員が選ばれることになっている。

議席は加盟国の人口比で決められるため、一番人口の多いドイツは96議席(現在は99議席)と大所帯、一番人口の少ないマルタが6名。詳しく見ると、ドイツは81万1000人に対して1議席であるのに対して、マルタは6万7000人に対して1議席だ。一見、不公平に見えるが、大国が力を持ちすぎないように配慮されているらしい。ドイツの次に議席の多いのがフランスで74、イタリアとイギリスが73。

EUの政治は主に、政府の長やEU委員会の委員長が集まる閣僚理事会の非公開の会議で決まる。そのため、EU議会は長い間、法案提出権さえなく、諮問・監督機関としての権限しか持たなかった。法律は理事会が作成し、議会が制定するという形をとった。「EUでは、大切なことはすべてドアの向こう側で決められる」と言われた所以だ。

しかし、2009年のリスボン条約以後、議会の権限が大きくなり、存在感が増し始めた。立法機関としての力も備えるようになり、EUの予算についても発言権を強めつつある。

ただ、それでもEUはまだ、どこで、誰が、何を、どう決めているのかが、一般市民には見えにくい。EUの組織図にいたっては、たとえ見えても、はっきり言って複雑すぎて良くわからない。

そんな中、議会だけは、とりあえずEU市民が直接選挙で選ぶのだが、しかし実際問題としては、せっかく選んだ議会に市民の声を反映させる仕組みが弱いため、関心が湧かない。自国の誰が議員として議会に参加しているのかもわからない。

今回の選挙も、町のあちこちにポスターが貼ってはあるが、初めて見る顔ばかりだ。EU議会の選挙は、政党を選ぶだけなので、国民は候補者について何も知らなくても不都合はない。

EU議員の任期は5年で、今回が8度目の選挙。1979年に第1回目のEU議会選挙が行われた時は、まだドイツ人も"ひとつのヨーロッパ"に沸いており、投票率は63%だったが、前回43.3%、今回はさらに落ちると予想されている。そんなわけで、ユンカー氏とシュルツ氏のテレビ討論の狙いは、まずは国民の興味を選挙に向けるという意味合いが大きかった。

ただ、その狙いが達成できたかどうかはわからない。テレビ討論では、多くのテーマが扱われたが、意見が黒と白にはっきり分かれるようなことはあまりない。加盟国が多くなり過ぎているため、共通の利害も見つけにくく、論点が曖昧模糊となりがちだ。だから、聞いている方も熱くならない。「ふーん、そうなの」という感じだ。

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