加藤智治【第3回】「ターン・アラウンド・マネージャーに必要な能力は、ロジックとエモーションを融合させる統合力」
組織を改革する「ターン・アラウンド・マネジャー」の仕事
加藤智治氏と慎泰俊氏

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慎: そういう誇りや会社の価値に対しても、スシローという会社はすごく誠実だなと思いますし、だから私はスシローのファンです。原価率の高さを一つとってもこだわりがすごいと思います。でもそれは、人によっては「飲食業でこんなに原価率が高かったら成り立たないんじゃないか」と言う人もいらっしゃるじゃないですか。多分それは、加藤さんもいろいろなところで言われてきたと思うんです。そこでうかがってみたいのは、最初にスシローに行ったときに、原価率の高さというのは気にならなかったのか、という点です。

加藤: 僕はユニゾンが投資をするときには関わっていなかったのでわかりませんが、スシローは原価率が高いというところがやっぱり強みだったと思いますし、そこは何があっても変えないということでずっとやってきた会社だと思います。ですから、原価率の高さが気になったということはなかったですが、後々になって気づいたことが一つあります。

つまり、僕が6年数ヵ月関わってきたなかで幾つか取り組んできたことの一つはスシローを世の中に知ってもらうということで、知る人ぞ知るブランドからみんなが知っているブランドにしていくという流れで、いろいろなブランディングやマーケティングをしていったわけですが、それはそもそもスシローの寿司が美味しいからこそできたんですね。元々良いものだから「良いですよ」と言えた部分があるので、そこはすごく重要だったんじゃないかと思います。

飲食業と関わってみて思うんですが、結局飲食業の本質は味であって、要は美味いかどうかが大事なんです。たしかにお店の雰囲気も重要だし、サービスも重要なんですが、やっぱり味、美味いかどうかがいちばん重要なんです。たとえば、お店がちょっと汚くてサービスも悪いけど、それでも美味しいということで成立している店もあるんですが、美味しくないけどすごく雰囲気が良いということで成立している店ってあんまりないと思うんですね。特に客単価が高くない業態では。

そこで多少コストが上がったとしても、やっぱり美味いことが飲食業のベースであって、そこにあとから値段とサービスと雰囲気がついてくるというバランスだと思います。根幹となるのはやっぱり美味いということで、そこは絶対に看板を下げずにやっていくべきだし、そういう意味で原価率が高いというのはやはりスシローの強みなんです。

勿論、料理の中身をどう進化させていくかを考えることも必要なんですが、でも「なんでスシローは他の店より美味いんですか」と言われたら「それはいちばん食材にカネを掛けていて、店内調理している店だから」という明確なリーズニングがあるわけです。

売上を伸ばすためのソリューションは持っておくべき

慎: マーケティングということに関しては、スシロー社内のチームも良いチームだったと思うんですが、社外の人々で構成されるチームもすごく良かったという印象を受けました。とくにマーケティング関係ではいろいろな凄腕の方々が手伝ってくださっているというふうに見えたのですが、外部のチームはどうやって作ったのでしょうか?

加藤: ベクトルの西江肇司社長、関西ではウドー音楽事務所さん、そして、クリエイティブディレクターである市耒健太郎さんを中心とした博報堂さん、この3社がずっとスシローの成長をサポートして頂いている社外のプロフェッショナルチームなのですが、最初のきっかけは僕の個人的な人脈からでした。広告宣伝費も限られているし会社の知名度もまだまだというなかで、「ぜひ協力してほしい」という形でお願いしてチームができあがっていったというのが経緯ですね。

慎: ターン・アラウンド・マネジャーにとって、そういうネットワークというのは、「持っていたら良いもの」なのか、それとも「マスト」なのかというと、どちらだとお思いになりますか?

加藤: 僕はマストだと思いますね。というのは、投資という観点で見た場合にスシローのターン・アラウンドが非常に成功したと言えるとすれば、僕はそれはトップライン(売上)が伸びたからだと思うんです。

バランスシートを工夫したり、コスト削減で利益を増やすということも、いわゆる基本動作として絶対に必要なんでしょうが、やっぱり成功の鍵となるのは、売上が伸びるかどうかが非常に大きな要素だと思うんです。ですから、その部分に対するソリューションをある程度持っておくべきだし、そういうネットワークというのはマストだと思います。

多分僕がマッキンゼーで経験をして、そこから直接スシローの案件に関わっていたらそういったことはできなかったと思うので、やっぱりフィールズでの事業学習の経験というのが自分にとってすごく大きなことだったと思いますね。

慎: それは小売業であってもB to Bであっても同じだと思われますか?

加藤: 同じだと思いますね。B to Bだとクライアントを増やすとかアライアンス先を増やすということで、ちょっと種類が違うと思いますが、非常に上質なネットワークを持っておくことによって社内に対しての説得力も増すということがありますね。

たとえばB to Bでも、「こういうクライアントをとれたらいい」「こういう企業と提携できたらいい」とかロジックを整理して、候補をリストアップをして獲得に動くんでしょうが、その時に「僕が知っている人がいますから、そこの会社の社長や役員と会いましょう」と言って直接会って話が決まるのがいちばん最短だし、いちばんインパクトがあるわけです。

そういったことが目に見えるかたちで実現するのが、描いた絵を前に進める原動力になると思うんですね。「絵は描きましたからこれだけ開発しましょう」と言ってみても「それをやるのは皆さんです」というのでは、なかなか人は動いてくれないんじゃないかと思いますし、それはB to Bでもすごく重要なんじゃないかと思います。

今は、売上に直結する部分の話をしましたが、売上向上に寄与することに限らず、コスト削減、人事制度改革、リスク管理等、改革のレバーになりえる経営課題に対してソリューションにつながるネットワークを持っておくことは、大切だと思います。それから、改革を加速させるために外部から優秀な人材を採用するための人材紹介会社の方々とのネットワークも大切ですね。

そういう外部のネットワークは、アイデアの実行という側面はもちろんのこと、新しいアイデアを社内に持ち込んでくれるという意味でも、ものすごくパワフルです。当たり前ですけど、全ての領域に精通してアイデアをプランとして組み立てることは不可能ですから。

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