池江泰寿調教師が語る 「ステイゴールド」と血統の魅力、そして「アッシュゴールド」『黄金の旅路 人智を超えた馬・ステイゴールドの物語』番外編インタビュー

2014年05月22日(木) 石田敏徳

石田敏徳現代新書カフェ

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池江:見た目はあまり、父親には似ていないですけどね(笑)この馬の場合、肉体面の完成度は決してまだ高くない。腰が甘くて、全般的に“緩い”印象が先に立ちます。ただ、そんな身体でデビューから3連勝したという事実が、潜在能力の高さを物語っています。腰の部分がもっとしっかりしてきたら、もう一段上のギヤを使えるはずで、ダービーを迎える頃にはもっと完成度も高くなっていると思いますよ。

三冠と凱旋門賞を狙うアッシュゴールドと「血統の魅力」

──その一方では今年、父がステイゴールド、母がオリエンタルアートという血統の、オルフェーヴル、ドリームジャーニーの全弟にあたる2歳馬(馬名アッシュゴールド)も入厩してきます。1億8000万円という社台レースホースの募集価格からも大きな注目を集めていますが、この馬にはどんな期待を抱いてますか?

池江:見た目とか身のこなしが同じ時期のオルフェーヴルにそっくりで、様々な意味で非常にレベルの高い馬です。もちろん、三冠もとりたいし、夢はやっぱり凱旋門賞のリベンジですよね。この馬で是非、凱旋門賞を勝ちたいと思っています。

──“血の繋がり”から数々の新たなドラマが生まれていくことは、ブラッドスポーツとも呼ばれる競馬の魅力のひとつで、それは『黄金の旅路 人智を超えた馬・ステイゴールドの物語』に通底するテーマでもあります。競馬には馴染みが薄い方々に、「血統を通じて見る競馬の魅力」をアピールするとしたら、どんな表現になるでしょう?

池江:人間の世界って、自分がリアルタイムで見られるのは3代か4代ぐらい。しかし競馬の世界ではサイクルが早いから、すぐに子供が出てきて、孫が出てきます。そういう楽しみは競馬特有のものだと思いますね。たとえばプロ野球でも、自分が応援していた選手の子供がデビューするとなれば気になるでしょう? ボクシングとか、芸能界でもそう。だけどそれは20年後とかになってしまう。

 それが競馬の世界では5年ぐらいでもう、自分が見ていた馬の子供がデビューしてくるし、競馬を見続けていくほど、思い入れも深くなっていくはずです。

──自分だけの物語をつくれる?

池江:その通りですよね。今、こうやってステイゴールドのことを思い出していたら、話をしていくうちにどんどん、当時の記憶が鮮明に甦ってくるんです。現役時代のステイゴールドについて、コペルニクス的なアドバイスをくれたときの上村君(上村洋行元騎手)の表情とか、豊君が言った「来年は年度代表馬をとれる」という言葉とか。

 1頭の馬を通じて、過去の個人的な記憶がフラッシュバックした経験を持つ競馬ファンの方は多いでしょうし、そうした“記憶に残る”馬を1頭でも多く送り出せるよう、これからも頑張りたいですね。

池江泰寿(いけえ やすとし)1969年京都生まれ。同志社大学卒業後、浅見国一厩舎所属の調教厩務員などを経て、94年に父・池江泰郎厩舎へ移籍。調教助手としてトゥザヴィクトリーやステイゴールドを管理。2003年に調教師免許を取得し、04年厩舎開業後、ステイゴールド産駒のドリームジャーニーやオルフェーヴルなどを手掛け、12年にJRA賞(最多賞金獲得調教師賞)を受賞。通算成績は417勝(うち重賞40勝/14年5月19日現在)。
聞き手:石田敏徳(いしだ としのり)1966年東京生まれ。早稲田大学第二文学部文芸学科卒業後、サンケイスポーツの競馬担当記者を経て、93年からフリーライターとして活動。現在、東京(中日)新聞隔週木曜夕刊に『KEIBAウォッチング』、夕刊フジ(金曜発行版)に『競馬(初)ヒストリア』を連載中。本書『黄金の旅路 人智を超えた馬・ステイゴールドの物語』は初の著書となる。

 

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