官々愕々 電力会社「値上げ救済」の愚

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原発再稼動の「遅れ」を理由として、電気料金再値上げが必要だという議論が始まった。電力会社やそれを支援する一部全国紙のキャンペーンだが、その言い分は本当に自分勝手で見苦しいものだ。

電力会社は、経産省を使いながら毎夏恒例の「電力不足」キャンペーンを必死になって展開している。原発再稼動を認めないと電力不足でとんでもないことになるぞという脅しだ。原発の必要性をアピールして再稼動につなげる、そしてもしそれが遅れた場合でも料金値上げの口実に使おうという作戦だ。

しかし、原発が動かなくて電力会社の経営が苦しくなると、何故値上げになるのか。電力会社は、原発が動かないのは天災のような不可抗力だと考えているが、それはまったくの間違いだ。

世界中で原発の安全規制が年々厳しくなる中、日本だけがその規制強化を怠ってきたが、そのサボタージュの推進役が電力会社だったことは原子力安全委員会の班目春樹委員長(当時)が証言している。みんなで集まって、日本だけ規制強化の適用を逃れる方法を検討していたというのだ。

原子力安全・保安院は、中越沖地震後に全原発に免震重要棟の建設を指示したが、実行したのは東電の福島第一などごく一部の原発だけだった。いかに電力会社がやるべきことを怠ってきたかがわかる。今日電力会社が直面している安全規制の強化は、遅すぎたものであり、しかも電力会社は基準の甘さを知りながら対応を怠っていたのである。

さらに、原子力規制委員会の「想定する地震の大きさを見直せ」という指示を電力会社は談合して無視した。再稼動審査の「遅れ」の主因は電力会社の対応にある。

またふた言目には原発推進は国策だったというが、強制ではない。6月の東電の電力料金は沖縄電力の料金を超えることになったが、沖縄電力は原発を保有していない。他の電力会社は沖縄電力のように原発なしで進めばよかったが、建設コストが高い原発を作ったほうがより大きな利益がでるという総括原価方式の甘い蜜に釣られて、とんでもない間違いを犯したのだ。

原発を選んだのも、安全対策を怠ったのも、新たな基準への対応が遅れたのも、すべて電力会社の責任である。少なくとも消費者にその責任はない。それなのに、原発再稼動ができないことを理由に料金値上げを求めるのは筋違いもはなはだしい。北海道電力、九州電力、関西電力などが経営難に陥っているが、値上げによる救済ではなく電力会社が自らの責任で対応すべきだ。

それは、何を意味するか。

答えは、破綻処理である。破綻処理により、経営者の責任が問われる。多くの場合クビだ。株は紙切れ。株主責任である。銀行の債権も大幅カット。貸手責任だ。電力会社は身軽になり、一気に再生する。被災者への賠償責任の問題もないから、東電のような難しさもない。電力会社の場合、地域独占のおかげで顧客は逃げないから、最も再生しやすい。ANAと競争するJALより容易だ。もちろん、破綻処理しても電力が止まる心配はない。

米国では、ごく普通に大手電力会社が破綻処理される。先月もテキサス州のエナジー・フューチャー・ホールディングスが負債4兆円を抱えて米連邦破産裁判所に破産法11条の申し立てを行った。

電力破綻の引き金は経産省に引いてもらおう。料金値上げを認めなければ破綻につながる。経産省は、電力会社と癒着し、福島の人々や国民に迷惑をかけてきた。一度くらい国民のための政策を実施してもらいたい。

『週刊現代』2014年5月31日号より

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話題作『原発ホワイトアウト』著者・若杉冽氏推薦! 「霞が関には古賀さんを隠れキリシタンのように慕っている官僚たちがいる。原発の裏も表も全部わかる必読書」

原発は「倫理的」に許されないエネルギーだという議論をすると、それは「感情的」あるいは「主観的」な議論であるというレッテル張りをされる傾向があります。経済論や技術論は受け入れられても倫理論は受け入れられないのが現状だと言ってよいでしょう。しかし、倫理の問題は、経済や技術の分野でも非常に重要な問題です。二人の元総理(小泉氏と細川氏)が期せずして脱原発を「人の生き方の問題」「倫理の問題」として語り始めたことは、極めて重要な意味があります。私が小泉氏や細川氏に期待するのは、大きな哲学、「脱原発の倫理観」を国民に提示し、国民的大議論を巻き起こすことです。議論の末、国民の大多数が新しい日本の生き方、「脱原発と再生可能エネルギーで、自然とともに生きる国日本」を目指すという共通の目標に到達すれば、その時初めて、脱原発が可能になるのだと思います。――<「はじめに」より抜粋>

※本書は2013年5月に先行発売した電子書籍『原発の倫理学 古賀茂明の論考』の内容を大幅にアップデートした上で再編集したものです。

 

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