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血圧・血糖値・コレステロールこれが正常と異常の分岐点です【第1部】患者は二の次で大ゲンカ 医療費を減らしたい役人が悪いのか、薬を売りたい製薬メーカーが悪いのか
国がゴマかすなら教えましょう"

健康診断で「異常」だと判定された人は、本当に病気なのか—組織の利益のために蠢く悪いヤツらにだまされないために、いま知っておきたい本当の基準値とは?

今までの薬は何だったのよ?

「私は上の血圧が130~150を行ったり来たりで、血圧の薬を飲むようになりました。食事でも塩分控えめを心がけてきた。ところが、新しい基準では、私の血圧値では高血圧ではないとなっている。今までカネを払って薬を飲まされていたのは、何だったんだって話ですよ。自分が病気なのか、健康なのか、訳が分からなくなりました」

こう憤るのは、山沢弘一さん(67歳/仮名)。血圧の新しい基準というのは、日本人間ドック学会が4月4日に発表したものだ。現行の健康診断では、上が130以上、下が85以上なら「血圧が高い」と判断されているが、この新基準に従うと、上は147まで、下は94までが「正常」とされる。

この基準値は、人間ドック学会と健康保険組合連合会(以下、健保連)が150万人を対象に行った共同研究に基づいてはじき出されたもの。だが、その値が従来のものとあまりに異なるため、大混乱を巻き起こしている。山沢さんのような患者たちは、いったい何が正しい基準なのか、どこまでが健康で、どこからが病気なのかが分からなくなり、不安に駆られている。

混乱しているのは素人だけではない。この新基準値をどう見るかについて、医療・製薬のプロたちの意見も真っ二つに割れて、「大ゲンカ」になっているのだ。

たとえば、慶応大学病院腎臓内分泌代謝内科の猿田享男名誉教授は、新基準を次のように一刀両断する。

「人間ドック学会が出した数字はまったくのデタラメです。もし患者さんが、血圧147は問題ないと信用してしまって、病気が悪化したり、亡くなったりしたらどう責任を取るつもりなのか。私は、患者を混乱させるような数字を出すなんてけしからんと、人間ドック学会と健保連に抗議しました」

その一方で、新しい健康基準を歓迎する声もある。関東医療クリニック院長で近著に『高血圧はほっとくのが一番』がある松本光正氏は語る。

「上が130を超えると高血圧という今までの基準は厳しすぎます。高齢者であれば、慢性的に190や200くらいあったって元気な人は一杯いますよ。私が診た患者で95歳で亡くなった男性は、60歳頃から最高血圧は220もありましたからね」

このように、血圧の基準値一つをとっても、まったく異なる立場が存在している。人間ドック学会は他に、血糖値、コレステロール、尿酸、中性脂肪といったさまざまな項目について新しい基準値を定めたが、どれも現行の基準を緩和するものばかり。それに従うと、今まで病人扱いされ、薬を処方されていた人たちのうち、かなりの数が「健康」だったことになってしまう。