メディア・マスコミ
将棋名人戦に見る主要紙の「偏向報道」
羽生三冠の3連勝を伝える5月10日付朝日朝刊

26本対1本---。同じニュースを報じているのに、記事数では毎日新聞の26本に対して読売新聞はたったの1本。一体何のニュースなのか。森内俊之名人に羽生善治三冠が挑戦した将棋名人戦七番勝負の第3局である。

ニュースの価値判断は報道機関によって異なる。だが、「26本対1本」はちょっとおかしい。日本の主要紙はいわゆる「特オチ」を気にしながら、日ごろ似たような紙面を作っているだけに、なおさらだ。特オチとは、他社の紙面に載っているニュースが自社の紙面上に載っていないことだ。

ニュース価値にそれほど大きな差はないはずだが

具体的に見てみよう。佐賀県武雄市で開かれた第3局は、5月9日に羽生三冠の勝利で終わった。記事検索サービスの「日経テレコン」を使い、「名人戦」「羽生」「森内」の三つのキーワードで検索してみた。

第3局スタートを伝える5月8日付から羽生三冠勝利を報じる5月10日付までの紙面を対象に検索すると、毎日では1面も含めて合計26本(西部本社版と地方版含む)の記事がヒットした。それに対し、読売では最小の扱いであるベタ記事が社会面に1本載っただけ。ちなみに共同通信もベタ記事1本、NHKは完全無視だった。

同様の基準で朝日新聞は毎日に次ぐ23本(西部本社版と地方版含む)。もっとも、1面に載った記事数では毎日以上だ。1面記事は毎日では5月9日付西部本社版朝刊の1本に限られたのに対し、朝日では4本。8日付西部本社版朝刊は第3局開始を伝えるだけなのに、1面に手帳ほどの大きさな写真を載せて両対局者と武雄市長を紹介したほか、社会面ではそれよりも大きな写真を載せて前夜祭の様子を記事にしている。

竜王戦では、昨年11月28~29日に行われた第5局で挑戦者の森内名人(当時)が渡辺明竜王を破っている。第5局開始を伝える28日付から森内名人勝利を伝える30日付までの紙面を調べてみると、記事本数で読売は22本(大阪読売、中部読売、西部読売含む)に達し、毎日(2本)と朝日(1本)を圧倒している。名人戦と正反対になっている。

毎日と朝日の基準に従えば、竜王戦は無視していいほどニュース価値が低く、読売の基準に従えば名人戦は無視していいほどニュース価値が低いということになる。どちらが正しいのか? もちろんどちらも正しくない。名人戦も竜王戦も将棋界の頂点に位置しており、ニュース価値にそれほど大きな差はないはずだ。

だとすると、毎日、朝日、読売3紙の報道は「客観報道」からかけ離れている。実質的に「偏向報道」と言っていいだろう。3紙とも「読者の利益」よりも「自社の利益」を優先した結果である。毎日と朝日は名人戦を共催しており、読売は竜王戦を単独で主催しているのだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら