ダンボールの銃でカチコミ、子どもらが残りたい町を作る---今野英樹(今野梱包代表取締役社長・宮城県石巻市)
今野英樹氏(今野梱包代表取締役社長)

石原裕次郎、ではない。が、男の中の男であることは間違いない。先日も地元・石巻のショッピングモールに「AK-47(1947年式カラシニコフ自動小銃)を密造」し、「カチコミしてきた」ばかりだ。

イベント用に作った玩具の銃。もちろん殺傷能力はないがホンモノそっくりの仕上がりだ

「カチコミついでに持ち込んだ」恐竜型の滑り台や木馬に地域の子どもらは大興奮だった。弱きを助け、強きを挫く男。家族への愛も深く、自作のiPhoneケースには愛娘との2ショットを刻み、時折、取り出して見てはほくそ笑んでいる。

ゴールデンウィーク期間、イオンモール石巻「konpo’sひろば」として子ども用の玩具を多数展示した

ただ、その姿を見せるたび、強面が災いして色々な人から「どこの娘を誘拐してきたのか?」と聞かれるため、やむなくケースの端に「俺の娘」と追記した逸話も持つ(左下の写真)。

昨今では、そんな父の背中を見て育った息子も同じようなキャラクターに。修学旅行から送られてきた写真(右下)を見たときには、「まぁ、俺も学ランを背広にして記念写真に並んで怒られたからなぁ」と苦笑したという。

(左)自作のiPhoneケースには娘が幼い頃の写真、(右)次男は「やることが自分に似てきた」という

今回は、そんなギャングの親分、もとい梱包会社の社長、今野英樹氏(41)のストーリーを紹介したい。

木製パレット(左)に加え、強化ダンボール(右)による梱包事業に着手。事業ポートフォリオを安定させた

一社依存からの脱却、強化ダンボールで「ものづくりの喜び」を見出す

今野氏は創業1973年の今野梱包の3代目として生を受けた。祖業は、大手製紙会社石巻工場向けの木製パレット(輸送用梱包資材)の製造。今野氏が1994年、22歳で自社に入社した際には、この製紙会社1社に売上の全てを依存する体制だったという。

危機感を抱いた今野氏は自ら営業活動を進め、約8年間で依存比率を8割にまで下げる。と同時に、パレット以外の資材や梱包関連の技術を研究し、次の事業の柱となる候補を探し始めた。その一つとしてパレットの廃材を木炭にして再活用するビジネスも有望視したが、最終的に今野氏が「これだ」と踏んだのが、三層強化ダンボール「トライウォール」を活用した梱包ビジネスだった。

1952年に米国トライウォール社によって開発されたこの素材は、原価や加工コストは木材と比べて高いが、堅牢でありながら軽く組み立てやすく、リサイクルも可能という特質がある。「細密な重量機械の梱包などで活用すれば、輸送費を含めたトータルでのコストダウン提案ができるし、環境配慮の潮流とも合致する」。

直感を得た今野氏は即時に同製品を取り扱うトライウォール・ジャパン社(現在)に訪問し、「うちを代理店にしてほしい」と猛アタックを開始する。しかも、「やりたい、やりたい、と口でいうだけでは説得力がないだろうから」と、子どもらのために積み立てた貯金まで使い、トライウォールの加工場まで建ててから、「ここでやらせてほしい」と訴えたのだという。

その情熱が通じ2005年、東北・北海道地区では唯一の正規代理店となった今野梱包は、積み荷ごとに細やかに梱包材の強度や重量を調整する配慮により、順調に売上を伸ばしていく。約6年を経た2011年にはトライウォールの事業が木製パレットの売上を凌駕。結果として1社依存も完全に脱却し、経営の安定を実現するまでとなった。

が、「なんか、それだけだとつまらないと思っちゃったんですよね」と今野氏。そこから今日に至る爆走が始まった。家具やイベント資材など、ありとあらゆるものをトライウォールで作り出したのである。

工場内の自身のデスクや椅子、引き出し、マウスパッド、飾り物に至るまで全てダンボールで作った(右)
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