「非正規社員の正社員化」は黒田日銀のマイルドインフレの成果だ

最近、いわゆるブラック企業と批判された会社が、あいついで経営の見直しに乗り出している。そう書くと左派政党からは「自分たちが問題点を指摘してきたからだ」という声が聞こえてきそうだが、それはまったくお門違いだ。

アベノミクスの第一の矢である金融政策によって、デフレ脱却が視野に入ってきたからだ。左派政党や左巻き知識人は、金融政策を理解できないので、相変わらず金融政策を批判している。まったくトンチンカンだ。

象徴的な安倍首相のメーデー出席

居酒屋のワタミが人手不足で一部閉店したり、ユニクロが従業員の正社員化を進めるなど、デフレ下で成長した企業に人手不足の影響が出たり、人材確保を急ぐケースが相次いでいる。

人材確保のために、一部では時給の引き上げも行われ始めた。多くの人にとって時給上昇や正社員化は良いことのはずだ。しかし朝日新聞は、「企業が悲鳴」という形で報道している。それらの報道では、人手不足や時給上昇の原因についてはほとんど触れていない。

本コラムの読者であれば、筆者が、金融政策によって雇用の改善が行われると予測してきたことをご存じだろう。今年のメーデーで、安倍晋三首相が出席したのはその象徴だ。

民主党は政権を取ったときに、雇用重視を主張しながら金融政策を活用できず、円高・デフレのため雇用の確保ができなかった。それを見透かした安倍自民党総裁は、民主党の先手を打つ形でインフレ目標を言い、政権交代になった。連合をはじめとする労働界の前で、雇用の増加を誇った(就業者数の劇的な増加は、3月31日付け本コラムを参照)。

金融政策の効果には遅れ(ラグ)がある。マネタリーベースを拡大しても、予想インフレ率の上昇、実質金利(=名目金利-予想インフレ率)の低下にもラグがある。それを受けて消費、投資、純輸出の増加など実物経済の変化にもラグがある。その後のインフレ率上昇や失業率低下にもラグがある。日本では2年程度の効果ラグがある(2013年5月27日付け本コラム)。1年経ったので、データを見れば、今年の3月までは消費税増税がなかったので、これまでのところはいい。So far so good といえる。


デフレからマイルドインフレに変わると、これまでデフレに適応してきた企業は、状況が変わるので苦境に陥ることもある。

名目賃金には下方硬直性といい、多くの企業では簡単に下げられない性格がある。ところが、企業によっては、それを簡単に行える企業もわずかながら存在した。

デフレ下では、モノの価格が低下していくので、名目賃金などのコストを低下できる企業が相対的に強くなる。その場合、非正規社員が多いほうが対応は容易になる。名目賃金コスト低下を過度にやると、ブラック企業というありがたくない称号をもらうこともある。

マイルドインフレ下では、名目賃金などの調整はそれほど難しくない。名目賃金を低下させる必要はなく、上方への対応が中心になるので、動かしにくい固定賃金ではなく、ボーナスや残業代などで柔軟に対応できるからだ。マイルドインフレ下で有利な企業は、正規社員が多く、社員のスキルを長期的に活用できるところだ。業績のアップは、ボーナスや残業代によって労働者にすぐ還元される。こうした現象は、かつての日本の高度成長期では当たり前の姿だった。

どちらが、雇用者にとって好ましいかは明らかだろう。だからこそ、デフレを克服しなければいけないのだ。

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