私が「ゆうちょ銀行」の社外取締役を引き受けた理由

「ゆうちょ銀行」の社外取締役を受けたワケ

愛読者の皆様へ

日本郵政は先週末(5月9日)、稼ぎ頭の100%子会社「ゆうちょ銀行」の社外取締
役候補に、私・町田徹を含む4人を新任する人事を発表した。6月25日の株主総会で承認手続きを行い、就任となる予定だ。

当の私のところには、お祝いの電報が届く一方で、「なぜ、あなたが?」とか「フ
リーランスの経済ジャーナリストとして、独立性を損なうことにならないか」といった驚きや懸念の声も寄せられている。

私自身は、「生涯一ジャーナリスト」であり続ける気持ちに変わりはない。今後も、経済に関連する森羅万象をじっくりと取材し、重要なことや放置できない問題を活字、映像、音声の媒体を通じて報じ続けていく。それが私の本業だ。

にもかかわらず、単なる副業と言えないほど重責のうえ、本業を制約しかねない社外取締役という仕事をお引き受けすることにしたのは何故か。

今回は、この連載の場を借りて、私が感じている現在の社外取締役制度の問題点と、その点と密接に絡む私の決断について、きちんと説明しておきたい。

「短慮」と笑われることを覚悟のうえで、正直に言おう。日本郵政の最高幹部の一
人から、社外取締役に就かないかと最初に打診を受けたとき、私は即座に「ジャーナリストとしての独立性を考えると、利益相反を招きかねない。難しいと思う」と辞退した。

しかし、新聞記者時代から師と仰ぐ、ある民放の社長に、「どんなことでも、批判する人はいるものだ。そんなことを気にするよりも、企業にとって不都合なことを過激に報じてきたジャーナリストを評価してくれるトップがいる企業ならば、その仕事にチャレンジしてみるべきではないか」と助言を受けた。

そして、私自身も、今や検察官出身の法律家や元高級官僚、そして企業経営の経験者を起用することが当たり前のようになっている社外取締役選びの実情に一石を投じる好機かもしれないと考えるようになり、翻意した経緯がある。

そもそも、社外取締役は、株主の立場に立って、社内のしがらみや利害に縛られない自由な立場から、内部昇格者の多い常勤取締役の業務執行をチェックして、収益の増大や経営の健全性確保に尽くすことが使命である。

米国では、取締役の半数以上が社外取締役で占められていることも多く、あえて「社外」という形容詞を付けないことすら珍しくない。これに対して、日本企業の間では、長らく内部出身の常勤取締役が大勢という時代が続いてきた。

最近になって、会社法で社外取締役の設置が重視されるようになったのも、企業の法令違反が相次いだことがきっかけだ。それゆえ、社外取締役の登用は、コンプライアンス重視の観点から、法令に詳しい検察官出身者や元官僚、企業倫理に精通した経営経験者に白羽の矢が立つことが多い。

だが、コンプライアンスと経営の両方に明るい人材は払底しており、多くの企業が社外取締役を置きたいと考えていても、なかなか置けないという事態になっているのである。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら