長谷川幸洋「ニュースの深層」
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ベトナム船衝突事件から読み解く中国の「尖閣侵攻リスク」

2014年05月09日(金) 長谷川 幸洋
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中国の公船が5月2日以降、南シナ海のパラセル(西沙)諸島付近でベトナムの巡視船などに繰り返し体当りや放水をしていた。現場海域で進める石油掘削作業をベトナムに邪魔させないための実力行動である。

衝突はベトナム側の発表であきらかになったが、中国外務省は8日、中国とベトナムの船舶が衝突したという事実関係そのものを否定した。その後、中国は「ベトナム側が衝突してきた」と言い分を修正した。このあたりは階級章などを外してロシアの武装勢力であることを隠しながら、クリミアに侵攻したロシアの手口をほうふつとさせる。

私は3月6日公開コラム以降、一貫してロシアのクリミア侵攻が中国に伝染する可能性を指摘してきたが、わずか2ヵ月で早くも現実になった形だ。中国は「力による現状変更」の意思を変えるつもりはまったくない。

こうした中国の力づくの挑戦は遠からず、東シナ海の尖閣諸島をめぐっても現実になるとみるべきだ。日本は集団的自衛権の見直しはもとより、漁民を装った尖閣侵攻など、いわゆる「グレーゾーン」問題への対応も急がなければならない。

こう書くと、必ず一部から「中国の脅威を煽っている」という反発がある。そういう意見に対しては「起こるかもしれない危機を予想して対応策を考えるのが政治だ」と答えよう。それは原発事故とまったく同じである。原発でも事故が起きる可能性はあったのに「起きない」という前提で政策が展開され、惨事を招いた。

原発反対を叫んでいる同じ勢力が集団的自衛権見直し反対を叫ぶのは、私に言わせれば、やや滑稽でさえある。原発も中国の動向も、日本にとっては同じ大きなリスク要因である。リスクには対応策を整えておくべきだ。見たくないシナリオだからといって、中国の尖閣侵攻リスクから目をそらせてはいけない。

権益の既成事実化を図る中国の戦略

さてそこで、今回の事態を眺めてみよう。

まず指摘しなければならないのは、ベトナムと中国はこれまで比較的、良好な関係を築いていたという点だ。ベトナムも中国も同じ共産党一党独裁である。もともと親和性は高い。防衛省防衛研究所が毎年出している「東アジア戦略概観」の2014年版によれば、実際にベトナムは中国はもとより米国、ロシア、日本、インドなど周辺大国と「全方位軍事外交」を進めてきた。

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