「週末農業」、業界に革新

平日は仕事をして、休日に農を学ぶ「週末農業」が業界に革新を起こそうとしている。その中心は20~30代の若者たちだ。会社を辞めて農家となったり、農の知識を生かして新規事業を立ち上げたりしている。

週末農業を勧めているのは、就農やアグリビジネス参入を志す社会人のためのビジネススクール「アグリイノベーション大学校」(マイファーム運営)だ。週末に開講するため、仕事を続けながらでも学べる点が特徴だ。2011年から開校し、卒業者数は231人に及ぶ。

家庭用の栽培キットを販売する濱田さん

濱田健吾さんは昨年同校で有機農業を集中的に学んだ。卒業後、おうち菜園(神奈川・横浜)を起業し、家庭菜園を勧めるウェブマガジンと栽培キットの販売事業を行う。今春にも再び同校に入学し、「養蜂学」を学ぶ。

濱田さんが農に出会ったのは、生き方に模索しているときだ。大学卒業後、オーストラリアに渡り小学校教師を務めたり、シンガポールやロシアでの起業も経験した。帰国後は外資系IT企業で働いていたが、効率化の先に何も見出すことができず、わずか3ヵ月で退職。

これからの「生き方」を模索していたとき、まず家族と過ごす時間を増やした。週末には有機農業研修を受講し、ほとんど会っていなかった学生時代の友人とも再会した。愛情、友情、信頼、絆など目に見えないものを大切にし、価値観を見直していった先に行き着いたのが、農だった。濱田さんは少年時代から自然が好きで、その価値観に気付いたのだ。

濱田さんには、フルタイムで働く妻と4歳と1歳の子どもがいる。一家の大黒柱として収入面での不安はないわけではない。営業に行くのにも電車賃が気になり、精神を落ち着かせるために、不必要なくらい深夜までパソコンに向き合ったりもしたという。しかし、それは焦りであって、最も大切にすべきことは「それで家族が幸せか」ということだと気付いた。

「お金を稼いでいるから幸せになるというわけではなく、日々の家事や育児であったり、休日に一緒に過ごしたりする日常にこそ幸せはある」と濱田さん。