高齢者向けサービスが急成長
病院給食最大手「日清医療食品」が「食宅便」を全国展開[在宅配食]

食宅便・まとめてお届けコースの「和風ハンバーグ」

全国で約5200件の医療・福祉・保育施設への食事サービスを提供している病院給食の最大手「日清医療食品」(東京都千代田区、安道光二社長)が、2012年度から全国展開した在宅配食サービス「食宅便」が3年目を迎えた。大手コンビニエンスストアの参入など高齢化の進展に伴い高齢者向けの在宅配食サービス分野が急成長をみせている。しかし、今後さらに1人暮らしの高齢者世帯が増加し、多様化する消費者のニーズに応えることは、そう容易なことではない。同社の取り組みは、社会保障費の抑制、在宅介護が主流となる制度改革が進む中で「食のあり方」を示すヒントとなるかもしれない。

日清医療食品は医療寝具サービスのワタキューセイモアの子会社で、医療食を病院向けに販売する会社として1972年に創立された。病院給食ではすでに40年の実績があり、13年3月期の売上高は約1880億円で、現在、約8500人の管理栄養士・栄養士を抱える。

メニューはこうしたノウハウを生かして作成され、旬の素材を生かした豊富なメニューが常時用意されている。食宅便事業を立ち上げた在宅サービス部の斉藤政人課長は「病院給食は体調にも配慮し、さらに飽きがこないようにメニューを工夫しています。3食を毎日提供してきた経験は決して小さなものではありません。超高齢化社会の中で、このノウハウを生かした食事を個々の家庭に提供することは、事業として確立することはもちろんのこと、当社が果たすべき社会的使命のひとつだと考えています」と話す。

メニューは「和食」「洋食」「中華」「肉料理」「魚料理」などの分野から選べるほか、「塩分ケア」「カロリーケア」「たんぱくケア」と食事制限の必要がある利用者のためのメニューもそろえている。主菜に4種類の副菜がついているおかずセットが基本。30種類から自由に選んだ7食をクール便で送る「お好みセレクトコース」、7食分を梱包した「まとめてお届けコース」は、受け取ったら冷凍庫で保管して、食べる直前に電子レンジで温める。このほかに1食ごとに温かい食事を届けるコースも用意されている。1食(540円、税込み)。電話(フリーダイヤル)やネットでの注文が可能で、12年度の売上高は約4億円で13年度は約15億円を見込んでおり、3・75倍の成長をみせている。

忙しい若い世代の利用増える

当初、高齢者向けの事業としてスタートしたが、「長期出張で家を空ける時に、夫の食事用に1週間分をまとめ買いしています」(共働きの20代女性会社員)というように働く女性の間での利用も増えてきている。斉藤氏は「お母さんも忙しければ、子どもも塾通いで忙しい。そんな家庭にも受け入れられているが、食宅便での食事が、高齢者も含めて食べることの楽しさ、大事さを経験していただく貴重な時間になっている。今以上に『食事の本質』にこだわったものを提供していきたい」と話す。

矢野経済研究所が昨年7月に発表した「食品宅配市場に関する調査結果2013」は、食品宅配市場は拡大基調にあると分析している。12年度の生協の個配サービスや高齢者向けの弁当などの食事を定期的に届ける在宅配食サービスなどの食品宅配総市場規模は前年度比103・9%の1兆8078億円。13年度は同104・1%の1兆8816億円と推測し、17年度には12年度比で121・9%の2兆2045億円に拡大するとしている。13年度から17年度の年平均成長率は4・0%を予測。高齢者を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる、いわゆる買い物難民がさらに増加し、在宅配食サービスをはじめとする食品宅配サービスに対する需要は着実に増加すると分析している。

4月11日には国立社会保障・人口問題研究所が「日本の世帯数の将来推計」(都道府県別推計)を発表した。35年には世帯主が65歳以上の高齢世帯の割合は41道府県で40%を超え、45道府県で75歳以上の世帯主の割合が20%を超すとしている。

高齢世帯のうち、独居の割合は10年の30・7%から35年には37・7%となる。都道府県別では、山形県を除く46都道府県で30%を超え、高齢独居世帯は全都道府県で増え、最も多い東京都は104万3000世帯に上る。また、全世帯の1世帯当たり平均人数は全都道府県で減り続け、10年には全国で2人以上3人未満となっているが、最少の東京都は15年に2人を割り込み1・97人となり、35年には1・87人に減ると予測している。

こうした事情を背景に食品宅配市場には、給食会社や食品メーカーだけではなく、外食産業やコンビニエンスストアなどさまざまな企業が参入し、シニア向け食品開発やネット通販、宅配サービスなどを展開しており、市場は急激に拡大している。

矢野経済研究所の報告書は各事業者における取扱商品や価格による差別化が重要になってきていると指摘。さらにITシステムの活用や受注や配送システムにおけるインフラ整備を基盤とするサービス内容の充実や使い勝手のよさなど、効率的なサービスや豊富な品揃えをタイムリーに提供する工夫が求められると提言している。

日清医療食品は次なる戦略を準備中だ。「その一つが注文方法の改善」と斉藤氏は話す。高齢者の中にはネットなどの情報機器へのアレルギーのある人も多い。「テレビなどの家電に注目しています。インターネットとテレビをつなぎ、テレビ画面をみながら注文できるシステムがあれば、食宅便のメニューの豊富さ、おいしさを目で見ていただいたうえで注文していただける」と話す。提携している宅配便業者もスピード化やサービスの向上に向けて動き出している。斉藤氏は「高齢化社会を補うだけの智恵が動き始めている。食宅便がその中心となり、新しいムーブメントを起こしていきたい」と話している。

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