ブロードバンド・コンテンツ不毛の日本には"無縁"な「ネット中立性議論」
NCTA Cable Showでネット中立性案を解説し、業界の自粛を要望するトム・ウィラーFCC委員長(筆者撮影)

「オープン・インターネットの議論は過去10年間にわたっている。もう十分だ。そろそろ終わりにすべき時が来ている」

場所はロサンゼルス・コンベンションセンター。先週、FCC(連邦通信委員会)のトム・ウィーラー委員長は米ケーブル・テレビ業界団体NCTAが主催する年次総会「The Cable Show」の基調講演でそう訴えた。猛々しいとも言える厳しい口調でオープン・インターネットの重要性を訴える委員長に会場は水を打ったように静まり返った。

米国ではギガビット・サービス競争が、今年から始まろうとしている。そうした中、ブロードバンドの担い手、米ケーブル・テレビ事業者にFCCはネット中立性議論で自粛を促した。光ファイバーはあってもサービスがない日本を尻目に、米国は、コンテンツとネットワークの好循環で市場拡大に動いている。

因縁のネットワーク中立性規制

まず最初に、紆余曲折を経てきた米国の「インターネット中立性」の議論を簡単に説明しよう。

今世紀に入りAT&Tなど大手ブロードバンド事業者が固定網を中心にブロードバンド整備を進めたが、2005年頃から急増するネットワーク投資に耐えかねて、ネット事業者に投資負担を求める動きが表面化した。グーグルやアマゾンがブロードバンドの恩恵だけを得て急成長しているとの主張から「ネットタダ乗り論」と呼ばれた。

これに対しネット事業者や市民団体が「ブロードバンド事業者は優位な地位を乱用し、ユーザーの平等性を侵害しようとしている」と反論し、インターネット中立性の規制議論が活発化した。ちなみに、最近米国でよく耳にするオープン・インターネット規制は、インターネット中立性規制と同じ意味だ。

2005年9月23日連邦通信委員会(FCC、日本の総務省に当たる)は簡単なネットワーク中立性ガイドラインを発行していた。このガイドラインとは、日本で言えば省令に当たる。

一方、バラク・オバマ氏は大統領選挙の公約にネット中立性規制を盛り込んだため当選後、省令ではなく、中立性の「法制化」を米国政府は進めた。一方、野党の共和党は中立性ガイドラインの法制化に反対した。こうしてワシントンを舞台に、ネット事業者や市民団体とブロードバンド事業者が激しい攻防を繰り広げる時期がつづいた。

そうした中、2007年後半FCCは「コムキャスト(米CATV最大手)がP2Pソフトの利用者に対しブロードバンドの利用を制限している」との提訴を受け、中立性ガイドライン違反として同社に業務改善命令を出した。

また、法律にすることが難しいと判断したオバマ政権は、既存ネットワーク中立性ガイドライン(2005年版)を2009年秋に強化し、事実上の規制導入を実施した。

一方、コムキャストは、中立性ガイドラインは法的根拠がないとしてFCCを訴え、2010年4月に勝訴した。連邦通信委員会(FCC)は完敗したが、消費者保護のために同規制は必要として、10年12月再び中立性ガイドラインを発行した。

ベライゾンは、この2010年版中立性ガイドラインを不服として裁判を行い、今年1月にベライゾン側の主張を大幅に認める判決が下った。これにより2010年版中立性ガイドラインも執行力を失った。

同裁判の結果を受け、FCCは先月、新しい中立性ガイドラインを制定するため試案(the Open Internet Notice of Proposed Rulemaking :NPRM)を発表し、意見募集を開始した。

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