企業・経営
「日本企業の取締役は規律と知識が足りない」ーーN・ベネシュBDTI代表理事が語る「日本的ガバナンスの限界」

社外取締役の導入など日本企業のコーポレートガバナンス改革が少しずつ動き出した。安倍晋三首相も成長戦略の中に企業のガバナンス企業をうたう。

今後、日本企業の取締役はどんな機能が求められていくのか。公益社団法人「会社役員育成機構(BDTI)」で代表理事を務めるニコラス・ベネシュ氏に聞いた。

ようやく日本で本格的なコーポレートガバナンス議論が始まった

---安倍晋三内閣は成長戦略の中でコーポレートガバナンスの強化を打ち出しています。

ベネシュ 日本企業の新陳代謝を促進して収益性を上げるために、コーポレートガバナンス(企業統治)を強化することが重要だと、やっと日本の政治家が言い出したことは喜ばしい事です。

これまでは、ハゲタカファンド対日本企業といった対立の構図の中でばかり、コーポレートガバナンスが語られてきましたが、そんな外国対日本といった議論は水掛け論というか、実に馬鹿げています。

ようやく初めて日本で本格的なコーポレートガバナンス論議が始まったと見ています。

---日本企業のガバナンスの問題点を繰り返し指摘されていますが、なぜベネシュさんは日本企業のガバナンス問題に関心を持ったのですか。

ベネシュ もともと投資銀行で日本企業に仕組債を売ったり、M&A(企業の合併・買収)のアドバイスをする仕事をしていました。バブル期に日本企業は相次いで米国の会社や不動産を買収しましたが、バブル崩壊後に売却を余儀なくされた時、お手伝いする事が多かったのです。その際、日本企業がいかにガバナンスが欠如しているのか痛感したのです。

バブル期に米国の資産を買った経営者の動機は「ライバル企業が米国で資産を買ったのだから、うちも」といった横並び意識でした。自社の事業にとってどれだけプラスになるかという検討の結果ではありません。ですから、本来の価値を大幅に上回る価格でも平気で買収していったのです。

私が処分のお手伝いをしたころには二束三文で巨額の赤字が生じました。それでも買収を決断したトップは責任を取って辞任することはありませんでした。

ーーー当時の負の遺産の処分が、その後の「失われた20年」の停滞につながったという指摘はありますね。

ベネシュ 日本企業の場合、ガバナンスが利かないので、不採算事業や不稼働資産があっても、簡単にそれを処分することができません。「あの事業は元社長の誰々さんが始めたものだから、彼が死ぬまで止められない」といったことを真顔で話しています。私もいくつもの日本企業のアドバイザーや社外取締役をやりましたので、そういう場面はたくさん見てきました。

---そうした問題の先送りをしないためにも社外取締役が必要なわけですね。

ベネシュ 不採算部門や子会社などの売却、リストラを日本企業は先送りしがちです。そこに外部の独立した取締役がいれば、社内の論理だけで物事が決まらなくなる。ただ社外取締役ひとりでは、社長や社内出身取締役に反対するのは難しいので、少なくとも3人いれば機能し始めると思います。

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