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日本が元気だった時代の象徴田中角栄を語ろう

「金権政治の権化」と呼ばれ、逮捕もされたそれでもオヤジのあの笑顔が忘れられない
週刊現代 プロフィール

山本 え? なぜその話を知っているんですか?

朝賀 人づてに、セスナ機から撮ったスクープ写真があるけれど、売らなかったと聞きました。

山本 '85年に角さんが脳梗塞で倒れると、多くのカメラマンが、目白で車椅子姿の角さんを撮ろうと、門の前で待ちかまえたり、ビルの屋上から望遠レンズで狙ったりしていました。

その頃、たまたま国会議事堂をセスナ機から空撮する仕事があって、急に思いついて「目白の角さんを空から表敬訪問しよう」となったんです。驚いたことに上空から見下ろすと、庭に車椅子の角さんがいる。僕はセスナの高度を下げてもらってシャッターを切った。角さんは泰然としていましたが、秘書が車椅子を押しながら庭を逃げまどう。

後藤 そんなことがあったんですね。

山本 その晩、現像された36枚の紙焼きを見ていると、僕は逃げる角さんを見たくないと思えてきました。密着した写真集まで出した僕が、「撮った、撮った!」と有頂天になるのは申し訳ない。僕が次に撮るべきなのは、リハビリに取り組む角さんの姿と決めていましたから、車椅子で逃げる姿を発表するのは違うと思った。僕が写真を撮ったと聞きつけた週刊誌が300万円のギャラを提示してきましたが、現像した写真は金庫にしまいました。

朝賀 プロの矜持だね。近頃、僕が意外だと思ったのは、青嵐会で田中批判の急先鋒で、口を開けばオヤジの悪口を言っている石原慎太郎さんですね。

昨年9月、あるテレビ番組で石原さんが、「東日本大震災の被災者のために、つくば新線沿いの関東平野に大規模な居住区域をつくるべき。田中角栄だったら、やってるよ」と言ったんです。心のどこかで、オヤジのことは認めているんだなと驚きました。

山本 被災地を取材すると、「今、こういうときに田中角栄がいたら」という声をよく聞きます。

後藤 竹下さんがこう言っていました。「囲碁将棋に天才がいるとしたら、政治の天才は田中角栄だ」。大きなスケールで発想すると同時に、岩に爪を立てて這い上がる。田中角栄を超えるリーダーが出てくる土壌を、早く日本は模索しないといけませんね。