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日本が元気だった時代の象徴田中角栄を語ろう

「金権政治の権化」と呼ばれ、逮捕もされたそれでもオヤジのあの笑顔が忘れられない
週刊現代 プロフィール
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朝賀 たしかに当時、オヤジは心のどこかで、竹下さんが動くのではないかと察していたと思う。ただ、何よりもショックだったのは、子供のように思っていたはずの小沢一郎さん、羽田孜さん、梶山静六さんの3人が竹下さんについていったことだったろう。

山本 僕が角さんの天下獲りへの執念を垣間見たのは、軽井沢の別荘でした。僕は未発表の写真で写真集をつくりたいと思い、角さんの軽井沢の別荘生活を撮りたい、と直訴したことがあります。すると、「せっかくの休みなのに、キミは俺を殺す気か」と断られました。

でも、僕は勝手に軽井沢に行き、別荘のまわりをうろうろしているところを見つかったんです。すると、「キミはどこに泊まっているんだ。ホテルは高いだろうから、うちに来い」と言う。しかし、「仕事はまかりならん」と角さんの撮影は許可されない。僕は悔しかったので、本人のいないときに目に付くものを片っ端から撮っていたら……。

朝賀 それが枕元の写真ですか?

山本 ええ、枕元には必ず国会便覧と10本ほどの赤鉛筆が置いてあり、朝見ると、赤鉛筆がすべて丸くなっている。その写真で、政治家・田中角栄の凄みを表現したんです。

朝賀 オヤジは全国130の選挙区の情報を国会便覧に書き込み、すべて頭に入れていました。

後藤 だから、選挙では誰も角さんに勝てない。

朝賀 敵をつくらない主義で、対立する派閥の議員でも支援をした。だから、「隠れ田中派」という言葉があったくらいです。

山本 カメラのファインダーから覗いていると、面白いことに気づきました。僕は佐藤栄作首相から歴代首相を撮り続けていて、権力を握った人間は例外なく顔が悪相になる。決断を迫られ、重圧に晒され続けると、顔つきがどんどん悪くなるんです。

田中角栄という人は、総理大臣在任中だけでなく、僕が密着している3年間だけでも3回も変わった。だから僕の写真集には、3通りの顔をした角さんがいる。その意味でもいまだ角さんに勝る被写体は出てきていませんね。そもそも竹下さん以降の総理は、あまり顔つきは変わっていません。

後藤 実際、田中角栄を超えるリーダーは出てきていませんからね。

朝賀 そういえば、山本さんはマスコミに売らなかったオヤジの写真を持っていると聞いたけど。

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