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特別 企業レポート 「パソコン禁止」「運動会」「社員旅行」が会社を強くする
サントリー 資生堂 三井物産 バンダイナムコほか
週刊現代 プロフィール
日本を代表する大企業が、いま「原点」への立ち返りをはじめている〔PHOTO〕gettyimages

いまやIT革新は日進月歩、便利になるばかり。しかし、その利便性はときに企業を危機に陥れる。顔を直接突き合わせる「人」と「人」とのコミュニケーションこそが、会社が生き残るカギになる。

メールは時間のムダ

サントリーでは毎週水曜日の午後になると、オフィスの雰囲気が一変する。デスクに座る人の数が減り、社内のあちこちでミーティングの輪ができあがる。オフィスには話し声が響き、活気のある空気に包まれる。一方で会社を離れ、外出する営業系の社員も多い。サントリーが昨年1月から実施している「プレミアムタイム」。毎週水曜日の12時から3時間、社内のパソコンに接触することが禁じられているのである。

同社が「パソコン禁止」タイムの導入に踏み切った理由はこうだという。

「どこの部署でも、なんでもメールでやりとりするようになり、そのために時間を取られ、現場に出る時間が減っているのではないかという懸念が指摘されていました。とくに若い人たちにとってIT依存からの脱却は大切だと思います。

もちろん、ITにもメリットはあると思うんです。でも仕事は結局、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションで成り立っています。プレミアムタイムの導入以降、結果として足を運んで人に会おうという意識が高まりました」(サントリー広報部)

サントリーホールディングスの佐治信忠社長は今年1月、米国の酒造大手ビーム社を160億ドル(約1兆6500億円)で買収すると発表した。この買収で同社は世界第3位の蒸留酒メーカーに浮上する見通しだ。グローバルな成長を視野に入れるサントリーが、組織を強くするために始めた施策の一つが、「IT断ち」だったというわけだ。

当初、「プレミアムタイム」の導入によって水曜日の残業が増えるのではないかといった声も社内にあった。だが、実際に始めてみるとそれは杞憂に終わった。それどころかプラス効果があらわれ始めている。

「いままでと何か違うことをしようという意識が芽生え始めているようです。営業部署だけでなく、関係部署全員で街頭に出て販売動向を確認しに行ったり、メールも漫然と送るのではなく、送ったあとに電話を一本入れて口頭でお礼を言ったりとか、具体的な変化が見られます。あらためてアナログの大切さが見直されてきたようです」(同前)

サントリーでは「プレミアムタイム」の実施に先立って全マネージャーに『「IT断食」のすすめ』を配付していたという。同書の著者であるローランド・ベルガー日本法人会長の遠藤功氏が語る。

「メールを送ってコミュニケーションをとったつもりでも、意図が正しく伝わっているとは限りません。それなら直接会ったり、電話で話したりしたほうが正しく伝わるし、相手の言い分も理解できる。すべてITに頼ると、かえって非効率的になって仕事の質が落ちるということです」

メールのほうが手軽で便利ではあるが、相手に訴えるものは希薄だ。直接会ったほうが相手に熱意が伝わるのは当然。さらに言えば、メールよりも手書きの手紙のほうが相手の気持ちを確実に揺さぶる。

「つまりITは手抜きの道具なんです。それも仕事をしたつもりにさせてくれる道具です。パワーポイントにしても、パソコンがきれいに資料をつくってくれますけど、資料を見栄えよくしたからといって、それ自体に一銭の価値もない。中身をよくするために時間を使うのではなく、資料を飾りつけることに時間を使う。それで本人は仕事をしたつもりになっているから、効率はどんどん落ちていく。それに気づかないビジネスマンが増えているのが現状です」(遠藤氏)

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