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全国民必読 気をつけろ! 鳥インフルエンザは熊本だけでは終わらない

アジアで猛威を振るっていた鳥インフルエンザが、ついに日本に上陸した。熊本県知事は自衛隊を投入したが、迎撃しようにも敵の姿は見えない。凶悪ウイルスに対抗できる武器は、どこにもないのだ。

鳥も人の姿も消えた

—すいません。この近くで鳥インフルエンザの……。

「何しに来よったと?あんた消毒して来たとね?あんたらがウイルスば、撒き散らしよっとたい!」

—すみません、お話だけでも……。

「すみませんじゃ、すまんばい!帰れっ!」

罵声を浴びせる者がいれば、「なーんも話すことなか。あんたらにわしらの気持ちはわからんと……」と記者に背中を向け、黙り込む老人もいた。

鳥インフルエンザが上陸した熊本県多良木町。記者が現場付近を歩いたのは11万羽もの鶏の殺処分が終わった直後の4月15日のことだった。

だが、現地の飼育農家の誰一人として、「終わった」とは考えていない。むしろ、「これから始まる」。そんな不安が、東京からやって来たヨソ者の記者を拒絶した理由だろう。

まずは鳥インフルエンザに感染した鶏が見つかったX農場を目指したが、真っ白な防護服を着た県の職員が規制線を張っており、進入禁止。やむなく引き返した。それにしても暑い。10分も歩くと、額にうっすら汗が浮かぶ。そして何とも形容しがたい、腐乱臭に似た臭気がときおり、鼻腔に吹き込んでくる。

そして—とにかく、誰にも出会わない。不気味なほど人がいないのである。ようやく取材に応じてくれる人を見つけたのは、歩き始めて数十分が過ぎてからのことだった。

「町も家畜保健衛生所も相当混乱している」と言うのは、現在、家畜などの搬出制限の対象区域に入っている採卵業者のA氏だ。

「最初に家畜保健衛生所から連絡があったのは、4月12日の深夜1時頃でした。近くの養鶏場から鳥インフルが出た、という内容のファクスが届いたんです。翌日には『これから4日間、卵を売ってはいけない』と電話がかかってきた。『それでは困る』と抗議すると、しばらくして『搬出制限区域内であれば売ってもいい』と連絡が入った。胸をなでおろしていると数十分ほどでまた電話がかかってきて『やはり、卵の販売は認められない』と言われて……。その後、何回、話がひっくり返ったかわからないよ」