連続ドラマW「トクソウ」の原作者・郷原信郎が明かす「特捜検察に「事実の徹底究明」を求めることの限界」
WOWOW×現代ビジネス特別連載第3回
〔PHOTO〕gettyimages

【第1回】はこちらをご覧ください。

文:郷原信郎(弁護士、元東京地検特捜部検事)

昔のような乱暴な捜査はできなくなった

昨年秋から今年にかけて、政治家とカネを巡る大きな問題が二つ浮上しました。一つは当時の猪瀬直樹・東京都知事が医療法人徳洲会から都知事選直前に5000万円の資金提供を受けていた問題。もう一つが、みんなの党・渡辺喜美代表(当時)が化粧品メーカー大手・DHCの吉田嘉明会長から、2010年の参議院選直前と2012年の衆議院選直前に合計8億円もの資金提供を受けていた問題です。

猪瀬氏も渡辺氏も、これらの資金提供について選挙運動費用収支報告書や政治資金収支報告書に記載がありませんでした。そして口をそろえたように「個人的借り入れ」とし、法的な問題はないと主張しました。

しかし国民の目に触れないところで、このような巨額の資金のやり取りがあったことに当然ながら世論は大きく反発しました。その反発の強さに抗しきれず、猪瀬氏は都知事を辞職、渡辺氏は党の代表を辞任しました。

政治的、道義的責任から言って、二人の辞任は避けられませんでしたが、世論の中にはそれだけにとどまらず、資金授受の意図やその実態を解明し、法的責任の追及を求める声も上がりました。実際、市民団体などが二人を刑事告発しました。

マスコミの中には「かつての特捜部だったら、絶対に逮捕・起訴している案件だ」という人もいます。

確かに、主任検事が思い描いたストーリーに沿った供述が得られるよう被疑者や参考人を対象に強引な取り調べを行っていた時代の特捜部なら、狙いを定めたターゲットを贈収賄や公選法違反で逮捕できたかもしれません。しかし、大阪地検特捜部の郵便不正事件をめぐる証拠改ざんなどの不祥事や東京地検特捜部の陸山会事件をめぐる虚偽捜査報告書作成などの不祥事で、検察に対する信頼は地に堕ち、昔のような、乱暴な捜査はできなくなっています。

現在の裁判所はそうした取調べがなされていないか丹念にチェックするようになりました。そういう意味で、「政治とカネ」問題についての検察の捜査・起訴のハードルは高くなっています。特捜部には、慎重かつ緻密な捜査が求められています。

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