常見陽平「若者に、『頑張れ』と言いっぱなしをする社会は、そろそろやめにしよう」【第4回】
『「できる人」という幻想 4つの強迫観念を乗り越える』より

【第3回】はこちらをご覧ください。

就活が楽しいイベントだった時代

平成20(2008)年は、リーマン・ショックの年として記憶されている。発生したのは9月のことだった。したがって、4月の入社式に臨む新入社員は、まだ景気回復傾向の時代に内定を得た学生である。

実際、この年は、売り手市場のピークだった。前出のリクルートワークス研究所が発表した有効求人倍率は2.14倍。当時、私は採用活動のリーダー的な仕事をしていたのだが、とにかく新卒採用バブルだったことを覚えている。東京ドームで合同企業説明会が開かれ、大手企業を中心に各社が採用活動に大変なお金をかけていた。会社案内のパンフレットもホームページも豪華だった。

リーマン・ショック以降、就活や新卒一括採用は「悪者」として紹介される機会が明らかに増えたが、当時の就活は実に楽しそうだった。学生は内定獲得ゲームをしているかのようにも感じられた。極端な売り手市場だったので、就職情報会社が主催する合同企業説明会や各社の企業説明会はエンタメ化していた。当時、リクルートが開いていた合同企業説明会では、ネイルサロンのブースまで登場していたほどである。

当時は、内定者を拘束するために、旅行を実施したという企業の話もよく聞いた。就職情報会社の営業担当からは、「『バブルへGO!!』という映画は絶対に観てください。いまの状況を理解できますから」と言われたものだった。実際、私が採りたいと思った学生は、たいてい数社から内定をもらっていた。私は学生を口説くための鉄砲玉として、毎晩のように、他社と迷っている内定者と飲んでいたものだ。

自分語りはこれくらいにしよう。平成20年入社組は、就活が厳しかった代とは別の意味でかわいそうである。というのも、比較的楽に内定を得たのにもかかわらず、入社したら経営環境がひたすら悪化し続けたからだ。

「できる人」という幻想 4つの強迫観念を乗り越える
著者=常見陽平
NHK出版 / 定価799円(税込み)

◎内容紹介◎

コミュニケーション能力を磨き、即戦力としてグローバルに活躍し、会社が頼りないなら起業しろ---。いったい、日本はいつまで「できる人」という幻想を追い求めるつもりなのか? 雇用や労働の常識を問い直し、日本のビジネスパーソンを強迫し続ける幻想の正体に迫る。若者よ、「できる人」を目指すな! 社会よ、若者の可能性にかけるな!

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