社会保障・雇用・労働
「残業代ゼロ」法案はブラック的で的外れ。労働の規制緩和は「解雇の金銭補償」で一点突破せよ!
                                                                                               thinkstockphotos/gettyimages

産業競争力会議は、一定の条件を満たす労働者について、労働時間に対してではなく、労働の「成果」に対して報酬を払うことを可能にする制度改正を検討している。労働に関する規制は、俗に言われる「岩盤規制」の中でも代表的なものだが、果たしてこの方向にドリルを突き立てて、穴は開くのだろうか。

「残業代ゼロ」法案は、有効か?

今回の産業競争力会議で企業経営者を務める民間委員が提言した案は、年収1000万円以上、あるいは従業員の半数以上をカバーする労働組合がある会社の組合の同意があって、且つ社員個人が同意した場合に、労働時間と報酬の関係を切る契約を可能にする、といったものだ。

数年前に議論されて立ち消えとなった「ホワイトカラー・エグゼンプション」の拡大版に近い。

これは、端的にいって、社員を「残業代」と無関係に働かせることが出来るようになるような法改正を進めるということだろう。現在でも、一定以上の管理職の社員は残業代がつかない形で働かせることが認められているが、その対象範囲が、拡大される。

仮に、8時間労働で得られる平均的な「成果」を社員に求めるとするなら、社員の一定比率は8時間よりも働くはずだし、同じくらいの比率の社員が、8時間よりも短い労働時間で同水準の報酬を得ることが出来て然るべきだろう。本来の効果は、上下対称で総合的な損得は中立的であるべきだ。

しかし、実際の職場の様子を想像するに、経営者側は「8時間労働で得られるはずの成果」を経営側に都合良くレベルアップして社員に伝えるだろう。

結局、この改正の実質的な意味は、管理職未満の社員に対しても「残業代ゼロ」の働き方を可能にすることだ。少なくとも、そのように利用する企業があることは、想像に難くない。仮にこの制度が出来れば、その効果は上下非対称で、経営側にとって有利なものになるだろう。

はっきり言うと、この非対称性に何となく後ろめたい感じがあるからこそ、「年収1000万円以上」とか「労働組合及び本人の同意」といった、言い訳の利きそうな付帯条件を持ち出したのだろう。

そして、身も蓋もない言い方を許して貰えば、こんな提案にならざるを得ないのは、もともとの筋が悪いからだ。

例えば、現在の日本企業の組合は、特に年収の高い企業にあって、組合は幹部が経営者と仲良しの「御用組合」だ。幾つかの業種の大企業では、組合幹部は、出世コースの一つでさえある。こうした企業の社員は、組合などという余計なものがあることによって、かえって残業代を稼ぎにくくなるわけだ。お気の毒なことだ。

付け加えると、政府が給料を上げようとしている時に、実質的に賃下げしようとする制度が覆い被さってくるのだから、この提案はマクロ的にもピントがずれている。

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