ISHINOMAKI2.0代表理事 松村豪太さん【後半】「面白い人たちと一緒に石巻をあたらしくつくる」
『東北発10人の新リーダー~復興にかける志』より抜粋

『東北発10人の新リーダー復興にかける志』第10章より抜粋

石巻2.0の誕生~これって革命だよね~

後に石巻2.0のもう一人の代表となる阿部久利は、もともとは旅館の経営者だったが、震災の1年程前から旅館業をやめて飲食店に業態変更をし、石巻には珍しいおしゃれなダイニングバーを展開していた。

阿部が経営していたダイニングバーは川沿いにあり、津波で全壊した。5月に、ダイニングバーを設計した東京で芦沢啓治建築設計事務所を経営している芦沢啓治が、阿部を助けに支援物資を持って仲間の建築家と共に石巻へやって来た。店の後片付けが一段落したところで、何か自分たちのスキルを活かして、もっとできることはないかと芦沢は考えていた。

そのような中、「石巻の状況を確認するためにいろいろ情報収集していたんだけど、松村くんっていう人でブログを書いている人がいるんだけど、知ってる?」と、芦沢から松村の話が持ち出され、阿部は松村を芦沢に紹介したのだ。阿部はその時点では、そのブログの存在を知らなかったという。「普段は飲み屋でしか会わなかったし、正直、意外でしたね。でも被災地以外の人にとってはそういう情報発信が本当に必要だったと思いますし、素直にすごいなあと思いました」と、阿部は当時のことを振り返る。松村と阿部は同じ飲み屋の常連で、そこで会ったら「どうも」とあいさつする顔見知り程度の知り合いだったのだ。そして、一緒になった時には、石巻ってつまんないよね、というような町への不満を言い合うような仲だった。

松村自身はこの頃、石巻スポーツ振興センターのクラブマネジャーをしながら、ブログを通じて来てくれた人やスポーツを通じて交流のあった人などへ、泥かきのボランティアの紹介活動を続けていた。だが泥かきをしても、その臭いは強烈で家にこびりついており、実際には住める状態には戻らなかった。そのため当時最も必要とされていたのは、臭いを除去することだった。それさえできれば、避難所から自宅に戻り、住むこともできる。そこで松村はちょうど応募を受け付けていた日本財団の東日本大震災復興支援を目的としたROADプロジェクトの助成を申請し、移動しながら高圧洗浄機でヘドロを洗う「ヘドロ洗い隊」活動を始めた。「ヘドロ洗い隊」では泥かきと高圧洗浄機で壁についた泥を流す活動を石巻全域と東松島で行い、活動報告をブログにつづった。こういった活動をする中で、松村の周辺にはいつしかさまざまな人々が全国各地から集うようになっていたのだ。

当時のことを松村は次のように語る。

「今まで田舎でつまんない人ばかりだと思っていたが、市外から広告代理店の人や建築家、大学の先生などさまざまな人のつながりで、これまで出会ったことがないような面白い人たちがたくさん来てくれました。そういった人たちと地域の若い仲間と一緒にする会話はとても面白く刺激があり、かろうじて残った阿部の自宅の2階部分で、まだ電気が来ないままの暗い中で、ちなみに闇鍋と呼んでいたんですが(笑)、毎日、限られた材料の鍋をつつきながら、今ならもっと町を面白くできるんじゃないかと考え始めていました」

松村も阿部も、町に対する反抗心が基になっていた。「典型的な話は阿部が旅館からダイニングバーに変更するとき、芦沢さんがデザインをしてくれたのですが、地元の大手施工業者が、素晴らしいデザインを台無しにしてしまうような、かなり適当な仕事をしたんです。そのやり取りの中で、『うるさいことを言うなら、お前らがここで仕事できないようにしてやるぞ』と言われたんですよね。こういうのが本当に石巻が嫌いだった部分で、それを変えたいという意識がありました。そのような中、闇鍋の場に広告代理店で働く人や建築家が集まっていて、この人たちと一緒に取り組むことで石巻を変えられるのではないかという希望が生まれたのです。阿部の『これって革命だよね』という一言が印象的でした」

「東北発 10人の新リーダー~復興にかける志」
震災から3年。被災地の東北では今、真の復興と新たな地域創造を目指して、多くの人が立ち上がり、さまざまな活動を実践している。中でも注目されるのは、次代を担う若い人材が続々と誕生していることだ。
本書では、主に20代から30代の若手経済人ら10人を紹介している。その活動や職業は実に多彩だ。
最先端の技術を使ってイチゴのブランド化に成功した例や、海産物の新たな流通モデルの構築に取り組む20代の漁業後継者、被災地で美容室を経営し雇用の場の創出にかける男性、地域の子どもたちに学びの場を提供する女性とその仲間たち…。
登場人物に共通するのは、単に従来の形の東北に戻すのでなく、新しい東北を作っていこうという「熱い志(こころざし)」である。若い彼ら、彼女らのバイタリティーに驚くばかりだ。
5人の著者は、ビジネスリーダーの育成に取り組むグロービス経営大学院の教官や学生。「新しい東北を作ることは今後の日本の在り方の先を行くこと。継続しながら、新しい力を」と代表の田久保善彦さん(経営研究科研究科長)。10人の若きリーダーたちの活動を通して、東北の可能性を探る。読んでいるうちに元気になる一冊。