寺田悠馬「クリエイティブの値段」

「白馬の王子様」を待たない少女たち ~映画『アナと雪の女王』の挑戦

2014年05月08日(木) 寺田 悠馬
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投資という行為には恐怖が伴う。

もし150億円という金額を任されたら、すべてを失う覚悟で、新しいことに投資できるだろうか。それとも小さな成功を、手堅く収めようとするだろうか。

映画『アナと雪の女王』で、ディズニーは前者を選び、大ヒットを生んだ。製作費150億円を投じて得た興行収入は、早くも10億7,000万ドル(約1,070億円)を超え、未だ公開中にもかかわらず、『トイ・ストーリー3』(2010年)が樹立したアニメ映画史上最高収の記録を更新している。

これほどの利回りは、手堅い投資では決して手に入らない。

それはディズニーが、自らの輝かしいアニメーション映画の伝統を見直して、一つの大胆な挑戦を行ったからこそ、得られた結果ではないだろうか?

ディズニーのクリエイターたちの冒険心は、本編が始まる前から伺えた。

映画館の照明が落ちて間もなく、『アナと雪の女王』とセットで上映される短編、『ミッキーのミニー救出大作戦』が始まった。往年の白黒アニメーションで、ミッキーマウスが初めてスクリーンに登場した1928年を彷彿させる映像を観て、私はてっきり、過去の作品のリバイバル上映だと思い込んだ。だが、ミッキーとライバルのピートが繰り広げる追いかけっこを眺めていると、驚いたことに、急にミッキーがスクリーンを破って、観客席の方に飛び出してきたのだ。

いや正確には、そのように見える映像処理が演出されていた。

スクリーンの外に出たミッキーはフルカラーのCGアニメーションで描かれ、スクリーンの中のピートは、白黒の手描きアニメーションのままである。以降キャラクターたちは、白黒の世界とフルカラーCGの世界を自在に行き来しながら、追いかけっこを続けたのだ。

後に知ったことだが、リバイバルに見えた前半の白黒アニメーションは、あえて古いビジュアルで制作された、新しい映像だった。つまり『ミッキーのミニー救出大作戦』は、手描きの白黒アニメーションとフルカラーのCGアニメーションの「合成」であり、その使い分けが脚本の必然性とマッチした、秀逸な短編映画だったのだ。

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