連続ドラマW「トクソウ」の原作者・郷原信郎が明かす「『最強の捜査機関』の権威を失った特捜検察はどう変わるのか」
WOWOW×現代ビジネス特別連載第2回
郵便不正事件で無罪となった厚生労働省元局長・村木厚子さん(現・厚生労働事務次官)〔PHOTO〕gettyimages

【第1回】はこちらをご覧ください。

文:郷原信郎(弁護士、元東京地検特捜部検事)

マイナスからの再スタートを余儀なくされた特捜検察

「最強の捜査機関」と言われた特捜検察の捜査とは、一皮めくればかなりきわどいものでした。

事件の端緒をつかんである程度の証拠をそろえたら、それを元に主任検事が事件のストーリーを組み立てる。そのストーリーで捜査のゴーサインが出ると、記者クラブ制度の中でサポーター的存在に仕立て上げたマスコミを使って、その筋書きに沿ったトーンで世論を煽る。被疑者や参考人の取り調べでは、恫喝はもとより時には暴力に訴えてでも自らが作り上げたストーリーに沿った供述を強引に得て事件を仕上げていく---というものです。

被疑者や参考人がいくら否認しようとしても、特捜部とマスコミが一体となって襲い掛かってくる中で、否応なく押しつぶされていきます。それが特捜検察の捜査の実態だったのです。

しかしこうした強引な捜査手法には必ず限界が訪れます。それが「不祥事」という形で露呈したのが、検事が証拠品のフロッピーディスクを改ざんしていた郵便不正事件(いわゆる村木さん事件)や、小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体を巡る事件で、聴取した小沢氏の元秘書・石川知裕議員の供述内容を歪めて捜査報告書に記載していることが明らかになった陸山会事件でした。

捜査の途中で、「幹部が描いたストーリーはどうも事実とは違うな」と現場の検事が感じることは結構あるでしょう。ところが、いったんスジを決めて捜査が突っ走ってしまうと、一部の検事の力だけでは捜査を後戻りさせることは極めて困難です。村木さん事件も陸山会事件も、特捜部のスジ読みと辻褄が合うよう証拠品や供述内容に検事自らが手を加えてしまったことで起こった不祥事でした。

村木さん事件では、捜査に当たった大阪地検の検事と特捜部の部長、副部長が逮捕・起訴されましたし、陸山会事件では担当検事が懲戒処分を受け辞職しました。当然、世論は特捜検察に対して猛烈な不信感を募らせ、「最強の捜査機関」としての権威も失墜しました。2つの事件を機に、特捜検察はマイナスからの再スタートを余儀なくされました。

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