ポール・クルーグマン「米国における課税の伝統」
『現代ビジネスブレイブ グローバルマガジン』---「ニューヨークタイムズ・セレクション」より
〔PHOTO〕gettyimages

「富の集中は危険である」というかつての認識

格差に関する問題が米国でさらに活発に議論されるなか、右派からは猛烈な反発が起こっている。保守派のなかには、格差に目くじらを立てるのは賢明ではない、高所得に税金をかければ経済成長が損なわれると主張する者がいる。また、高税率はアンフェアであり、自分の稼ぎは、自分のものにできて然るべきだと主張する者もいる。さらに、それは米国らしからぬことだという主張も見られる。

アメリカ人は常に、富を築いた人物を称賛してきた。あまりにも多くの富を誰かが握っているとほのめかすことは、この国の伝統に反するというわけだ。

第26代アメリカ合衆国大統領のセオドア・ルーズベルト氏〔PHOTO〕gettyimages

確かに、生粋のアメリカ人なら「政府、特に連邦政府が、不公平な形で富を得ることを効果的に制限しなかったために、権力を握りそれを拡大することに躍起になる、とてつもなく金持ちで経済力をもった少数の人々を生み出すことになった」とは言わない。そして、「財産の規模にともない、急速に拡大し続ける大きな富に対する累進課税」を求めるようなことはしないだろう。

これを言った左派の人物はだれか?1910年の有名な新しい国家主義演説を行ったセオドア・ルーズベルト(※)である。20世紀初頭、米国の指導者の多くは、極端な富が集中する危険性について警告を発し、膨大となり得る富を制限するために、租税対策の導入を促したというのは事実だ。

もうひとつの例として、偉大な経済学者のアービング・フィッシャーが、1919年に米国経済学会で行った会長演説のほとんどは、「非民主的な富の分配」の影響に対する警告であった。彼は、財産に多く課税することで、富の相続を制限する提案に賛成している。ちなみに、今日の経済問題を理解する上で、彼の「債務デフレ論」は必須だ。

(※)テッド・ルーズベルトとも呼ばれる。第26代アメリカ合衆国大統領。第32代大統領フランクリン・ルーズベルトは従弟(12親等)で、姪の婿でもある。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら