『エロの「デザインの現場」』 - R18の想像力

レビュー:内藤 順

なにもかもが久しぶりの経験であった。

書店でなかなか見つからず、店員さんに「『エロのデザインの現場』って本、ありますか?」と聞いてちょっと恥ずかしかったこと。電車の中で隣の人に覗きこまれないよう、表紙に角度をつけてガードしながら読まなければならなかったこと。家に帰ってきてからも妻に見つからぬよう、大きめの写真集の隙間に背を奥側に向けてしまうなど細心の注意を払わなければならなかったこと。

誤解のないように強調しておくが、本書は別にエロ本ではない。エロ本のデザインを司った男たちの物語、そしてその制作現場について書かれた本である。だが、それでも眉を潜める人というのは少なからずいるだろう。かくもエロ本には人権がない。しかし本書を一読するだけで、エロ本は恥ずかしくて隠さなければならないものというイメージがきっと払拭される。

登場する9人のデザイナーは、いずれもエロのデザインをすることが好きでかっこいいと思うからやっている人たちばかりだ。しぶしぶエロのデザインを引き受けたわけでもなければ、お金だけが目当てでもない。かっこいいことをするための「遊べる自由度」が高いからやっている。その結果、たまたま媒体がエロ本であったに過ぎない。

当時のエロ本は写真をモノクロで使うことすら『冒険』っていう時代で、すべてのページが肌色じゃなきゃいけないという相当遅れた代物だったんですが、逆に肌色の総面積をキープしてりゃデザイン的には何やってもいいんでしょってことで。(古賀智顕)

デザインというヒエラルキーのなかでは完全な底辺なわけです。だからぼくはそこに行きたかった。つまり、なにも期待されてない。でもそれが逆に、自由なことができる場、実験的なこと高度なことをやっても誰にも文句を言われない場として、ものすごく魅力を感じて入ってきたんです。(こじままさき)

性欲と表現欲、二つの欲求に折り合いがついた時、まさに革新が生まれる。エロ本黄金期をクリエイティブで牽引したデザイナーたちの仕事ぶりとは、いかなるものか? そのいくつかを「抜いて」みたい。