突き抜けた6次化商品を作る、不死鳥鈴木魔人の挑戦【後編】---鈴木賢治(47PLANNING代表取締役・福島県いわき市)

鈴木賢治氏。「突き抜けた6次化商品を開発し、日本の各地域の魅力を発信していきたい」

公認会計士の資格取得するつもりが、なぜか対戦型挌闘ゲームにハマり、3年かけて「鉄拳王」に。「26歳。無職。特技:鉄拳」を脱却しようと、鉄拳仲間も引き込みティッシュ配りなどの仕事に「命がけで」取り組んだ結果、今度は「新記録の男」と呼ばれるようになり、周囲の求めもあって会社を設立。

「27歳。社長」となった鈴木賢治氏は、ほどなく学生時代に抱いた自らの志の原点に立ち戻り、2009年、「47PLANNING」を立ち上げた。

「地域を元気にすることで、日本を元気にするような会社をつくる」。2011年、故郷・福島の食材を中心に据えた飲食店「47DINING福島」を、杉並区高井戸にいよいよオープンという矢先。東日本大震災が起こった。

幸い家族は無事だったが、父がいわき市で経営する製氷会社の工場や事務所は全壊。47DINING福島も、食材の提供を頼んでいた人々が被災したり、原発事故の影響からすぐの魚介類の水揚げの再開が難しかったり、といった事情から開店を延期せざるを得ない状況になってしまった(詳しくは前編を参照)。

4月6日、自社が保有するキッチンカーでいわき市に炊き出しに行った鈴木氏は、その帰り、小学校時代からの相棒で、建築やまちづくりのプロとして47PLANNINGに勤務する松本丈氏らと銭湯で、こんな話をした。

地元のおばちゃん達に「500食の炊き出しをすると、材料費だけでも10万円はかかる。『賢ちゃん、ありがとう』などと言ってもらえて、それなり満足感はあるが、自分らの企業体力だとそういつまでも続けられるものではない。復興の道のりは長いし、炊き出しは本質的な課題解決につながるものではない。被災地の経済的な自立につながる活動を考えなければダメだ」

地震の発生から1ヵ月足らず。瓦礫の中、まだ、捜索や最低限のライフライン復旧のための活動が行われ、避難所はあふれ、原発事故の拡大を懸念し、国内外に逃れる人も見られたこの時期に、「地域の経済的な自立のために尽力しよう」と考えた者は少なかったと思う。が、鈴木氏は動いた。

いわき駅前に復興屋台村を作ろうと思うんです

最初に取り組んだのは、復興飲食店街「夜明け市場」の立ち上げだ。4月12日。市内で行われた集会「KIBOWいわき」に参加した鈴木氏は、60名ほどの参加者を前に、いきなり宣言する。「いわき駅前に復興屋台村を作ろうと思うんです」。

地元の会社経営者や店主など有力者が多く集まり、不安や不満、課題ばかりが語られる中。特に発言を求められたわけでもない場面で立ち、声を張った。

「東京に出て行った若造が何を言い出すんだ」と思った人も、もしかしてあったかもわからない。けれど、「なんだか面白そうな奴がいる」と名刺を持ち、寄ってきてくれる人もあった。後に出資してくれた人もある。鈴木氏は、こうした細い糸を丁寧に手繰り続け人脈を増やしていった。

2011年4月のKIBOWいわき(左写真)で声を上げた鈴木氏。その後も定期的に参加している。右写真は2013年、鈴木氏の左手前が松本丈氏

聞けば、地震や津波により店舗を失った飲食店主の多くが「働きたいのに働けない」というストレスを抱える状況。ましてや、「働けないから東京に出てアルバイトをする」という人もある状況は、復興を減速させてしまうかもしれない。そう考え、必死になった。

先行きの見えない中、1店1店がバラバラにということだと再起の踏ん切りがつかないかもしれないが、そうした個店の集積を、しかも駅前に作れたら、相互に支え合い活況を作り出せるに違いない。

「屋台村がうまくいき、地元の人間が地元の食材を楽しそうに食べている姿がテレビなどで放映されれば原発事故からの風評払拭に一石を投じられるのでは」との計算もあった。

早速、場所探しと出店希望者の開拓に動いたが、開店が遅れた47DINING福島とのダブルローンとなり、資金的な余力がほとんどない中、紹介される空きビルやショッピングセンターでの企画実現の見積もり数千万~億単位と高額。「駅前から離れた空き地に補助金でプレハブを建てれば」とアドバイスしてくれる人もあったが駅前立地を譲る気はない。

焦る中、ようやく出会ったのが、30店舗中23店舗が空きになっていた「白銀小路」という通り。男性でも一人歩きは少し躊躇するような暗く寂れた場所は、しかし、駅から徒歩3分という好立地だった。

震災前から、このシャッター通りの再生に頭を悩ませていたオーナーと、空き店舗の改装であれば低コストにビジョンを実現できるという鈴木氏らのニーズはすぐに合致。「明けない夜はない」との思いを込めた夜明け市場が11月、立ち上がり、復興の旗印として注目を呼んだ。

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