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三匹のおっさん記者、東京地検特捜部を語る
第3回 リクルート事件が栄光の絶頂だった

政財界の要人に未公開株をばら撒く。社会を揺るがしたリクルート事件は、ある調査報道が発端だった。それを受けて特捜部は動く。「悪い奴を眠らせない」。そんな気概を持った検事がかつてはいた。

渡辺喜美はどうなるのか

小俣 猪瀬直樹・前東京都知事が徳洲会から5000万円の資金提供を受けていた問題は、公選法違反の略式起訴で幕引きです。予想していたこととはいえ、特捜部の対応にはがっかりしました。

村山 国民の多くが「何らかの賄賂だったのではないか」と疑っていたと思います。贈収賄は証拠不十分で不起訴になっても、少なくともカネは選挙目的で提供されたもので、収支報告書に記載されていない以上、公選法違反に問われるのは当たり前と受け止めていたでしょう。公開の裁判で徳洲会側の資金提供の動機や背景が明らかになるのを期待していたと思います。

村串 それが当然の国民感情でしょうね。

村山 ただ、猪瀬氏は「私的な借金で選挙とは無関係」と主張していました。検察上層部は、猪瀬さんを正式起訴するには、あのカネが「選挙資金」であることの確実な裏付け—すなわちカネが選挙に使われた証明が必要だと注文を付けました。特捜部はそれをクリアできませんでしたが、徳洲会側から「選挙資金として貸した」との供述を得ることには成功したようです。検察は最終的に「虚偽記載の罪は成立するが、すでに社会的制裁を受けている」などの理由で、略式起訴することを決めた。猪瀬氏側も「選挙資金の側面があった」と認め、略式請求を受諾しました。

村串 でも、国民目線では、たかだか「罰金50万円」でお茶を濁されたようにしか見えませんけどね。

村山 ええ。国民に対する説明責任という点では疑問の残る処分です。

村串 そこに降って湧いたのが、渡辺喜美・みんなの党代表が化粧品会社DHCの吉田嘉明会長から8億円を借りていた案件です。過去の事件とのバランスを考えれば、この一件を検察は放置するわけにはいかんでしょう。

小俣 渡辺氏は今月7日、残っていた借金5億5000万円は耳をそろえて吉田会長に返済したとし、代表を辞任しました。辞任会見では「法的に何ら問題はない」と開き直りましたが、それで済むとは思えません。

村山 仮に、政党の党首が企業経営者から8億円ものカネを選挙資金や政治資金として提供されながら、有権者と国民に情報開示していなかったとしたら大問題です。

渡辺氏は発覚当初、8億円は個人として借り、手元にはカネは残っていないと説明していました。しかし、辞任会見では一転して5億円近くを妻の口座で「政界再編などに備えて保管していた」とし、それが返済原資になった説明しました。どうして最初から保管していたと言わなかったのか。腑に落ちませんね。裏付け資料を示してきちんと説明してほしいと思います。

小俣 特捜部はこれまで政治家とカネの問題に何度も斬り込んで来ましたが、やはり金字塔と呼べるのはロッキード事件※1でしょう。この事件を立件したことで特捜検察は国民の喝采を浴びたわけですが、実はその前の10年近くの間は眠っちゃっていたんですよね。

村串 '68年の日通事件※2の影響ですね。この事件では、社会党の参議院議員を逮捕しながら、最大のターゲットだった自民党の池田正之輔代議士を逮捕できず在宅起訴にしてしまった。そのうえ、特捜部は国税局の調査官5人を日通から接待を受けていたとして、収賄容疑で逮捕してしまった。

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