芸術家とデザイナーの違いはどこにあるのか

2014年04月24日(木) 坂井 直樹
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芸術の源泉は「個」にあり、デザインの発端は「社会」にある

芸術は、個人による社会に対する個人的な意志の表現でもある。よって作品をつくる"源泉"は「個人的なもの」であり、芸術家本人にしかわからない。芸術家が孤高のイメージをもたれるのはそのためだろう。

一方、デザインは、その発端を個人ではなく社会にもつ。他者と共有できる問題を発見し、それを解決していくことが「デザイン」である。だからデザイナーは、より市民に近いイメージをもたれる。デザインは、その発端が社会にあるため、デザインの理由やプロセスを他者も理解・共感することができる。

では「デザイナーという人間」の"源泉"には何があるのだろうか。個人的な意志がなく、社会の問題発見からデザインが「始まる」のであれば、人としてのおおもとには何があるのか。私はデザイナーの根本には「"なにもない"がある」と考えている。

原研哉が著書『デザインのデザイン』のなかで、「むしろ耳を澄まし目を凝らして、生活の中から新しい問いを発見していく営みがデザインである」と語るように、デザインとは私たちが日々生きていくなかで通過する「見落としがちな物事の"雑音"に耳を澄ませること」なのだ。まずは日常の中に課題をみつけるところからデザインは始まる。

だから、デザインを生業とする人の底にはなにもない。芸術家がもっている「こんなものをつくりたい」「こうしたらかっこいい」「ああしたら美しい」という"自我"は存在しない。デザイナーが重視する"自分"とは、環境のなかでそれを感受する受け皿としての「個」なのだ。

デザイナーとはそのように「呼吸」する職業であり、なんというか、空虚だが豊満な人としてのあり方だと感じている。
 

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